カンボジアの奇祭「水祭り」に参加してみては?



時に激しく、時に艶やかに、見るものを感動へと誘う世界のお祭りたち。その空気は見る者の感情を時に激しく揺さぶります。

そもそもお祭りとは風土と文化の結晶であり、人の営みの歴史でもあります。お祭りを知ることは、その場所に暮らす人々を知ることでもあるのです。

 

今回は、アジア各地に数あるお祭りの中から、およそ1,000年間も続いていると言われている奇祭、カンボジアの水祭りを紹介したいと思います。

国中が熱狂に包まれる三日間!アジアを彩る祭り、カンボジアの水祭りをみていきましょう。

 

とその前に…

 

 

東南アジア各地のお祭りたち

世界では一年を通して様々な祭りが開催されています。中でも、神秘的な祭りが多いのはアジアです。自然と生きる人々が壮大な景色を作り出しています。

例えば、タイのプーケットではベジタリアン・フェスティバル、インドではホーリー祭りなどなど。

インドのホーリー祭り

 

タイランドには他にも様々なお祭りがあります。タイ東北部の町スリンでは、タイ全土から300頭を超える象が集結するゾウ祭りが開催されます。

これは、タイの人々にとって大事な働き手であり財産であり、そして家族であるゾウに感謝を伝える日でもあります。ゾウは神の使いだと信じているタイならではの祭りです。

 

さらに、タイの北部チェンマイで開催される有名なお祭りとして、幾千幾万ものオレンジの光がゆっくりと夜空に舞い上がるコムローイ祭りがあります。

その起源は灯籠流し(ロイクラトン) 。13世紀頃、川から受ける恩恵に対して感謝の気持ちを表すため、蓮の花をかたどった灯籠 (クラトーン) を川に浮かべ、水の精 (ローイ) にお祈りをしたのが始まりだと言われています。

 

そして、今から30年ほど前に、灯籠が、空に舞う方法へと変化していったのです。今では、人々がブッダへの感謝の気持ちを込めて、ランタンを空に飛ばします。このランタンには、この世の苦難を一緒に空へと連れ去っておくれ、という思いが込められているのです。

他にも、ミャンマー、ラオス、タイなどでは、街中で水をかけあう水かけ祭りが盛んです。水には「清め」の意味があり、1,000年近い歴史をもって水かけ祭りが開催されているのです。

 

 

 

水の恩恵を受け続けてきたカンボジア

アジア最大の湖、トンレサップ湖を保有する水の都カンボジアには、メコン川が北から南へおよそ500kmに渡って流れています。人々は、長きに渡ってこの水がもたらしてくれる恩恵で暮らしてきました。

そこには、熱帯雨林地帯ならではの、雨季と乾季が織りなす環境の変化もあります。こうした、全く異なる自然の変化を受け入れながら暮らし続けているカンボジアの人々。

 

カンボジアには、象徴とも言えるアンコール遺跡群があります。このアンコール遺跡群を見るために、年間、350万人以上もの観光客が世界中から訪れますが、実は、発見されてからまだ百数十年ほどしか経っていないのです。

見るものを惹きつける、水面に映るアンコールワット

 

聖なる池に反射したこの景色をきれいに見ることができるのは、雨季で水量が増えている9~11月頃です。カンボジアの人々にとって、水は生活のためだけでなく、神聖なものでもあります。

11月の満月の前後三日間…川の水量が最大になります。人々が水の恵みを最も感じるこのときに、雨季があけるこの時に、「水祭り」が開催されるのです。

 

ちなみに、国王が崩御したり、大災害が発生したり、水量不足が起こったりすれば即中止となります。しかも、国民的行事であるにも関わらず、直前まで開催か中止かがわからないのです。

 

 

 

カンボジアの「水祭り」

カンボジアを代表する最大のお祭りといえば、水への感謝を捧げる伝統的な「水祭り」でしょう。カンボジアの「水祭り」とは、三日間かけてボートレースを行ない、1位を決めるお祭りのこと。

カンボジア人にとっては、鬱陶しい雨期が明けるという喜びにプラスして、ボートレースに一喜一憂できるこのお祭りはとっても大事なイベントでもあるのです。

 

 

このボートレースに参加するため、国中から多くの人が集まります。競技には、男女それぞれ、立ち漕ぎの部と座り漕ぎの部があります。ボートの構造上、水が入りやすくなっているため、水を汲み出す係と漕ぎ手の息がぴったり合っていないと沈没してしまうことも。。。

チームがいかに団結するかがこのレースのポイントなのです。

 

 

近隣のアジア諸国でも水祭りは行われていますが、その多くは「水の掛け合い」がメインイベントとなっています。ところがカンボジアでは、ボートレースが一番の見どころなんです。

ドラゴンボートと呼ばれる細い木製の大型手漕ぎボートが300艇、ボートにぎっしりと乗り込んだクルーたちの数は計2万人にも及ぶという大規模なレースなのです。

 

 

よく似たドラゴンレースは中華圏で多く見かけますが、カンボジアの「水祭り」は川の規模も船のサイズも数もクルーの人数も全てが桁違いです。

そして何より、観に集まる人の数も桁違い!国をあげての「水祭り」は、熱いカンボジアをますます熱く燃えあがらせます!

 

 

 

水祭りのイベント

ボートレースが開催される川の周辺では、各種イベントも行われています。例えば、伝統舞踊のステージがあったり、のど自慢大会が開かれていたり。子供向けに小規模な移動遊園地があったりもします。

また、祭りの開催中は多くの食堂や商店が休業になってしまいますが、イベント会場周辺には食べ物の屋台が出るのでここで食事ができます。

 

そのほか、満月の夜に行われる燈籠流しも見ものです。日本でも使われている手の平サイズのものから、大きな浮き船まで、企業や政府団体による凝ったつくりの燈籠は、灯りの少ないトンレサープ川の暗闇を幻想的な風景に変えてくれます。

そんな燈籠流しの最後を飾るのが花火大会です。シンプルな打ち上げ花火がほとんどですが、川面を水鏡にして倍の美しさを堪能できます。

夜は川風が心地よく、お祭りの興奮も冷めてきます。レースが終了すると、渡し船やクルーズ船も出てくるので、それらに乗って川を流れてみるのもいいですよ ☆

 

 

 

ボートレースに参加したい方へ

最後に、ボートレースに参加してみたい方へ一言!

ボートレースに参加するには、ボートを所有する寺院のチームに入る必要があります。地域、企業、団体などがチームを組んでいますが、カンボジア人にとって特別な祭りだけに、地元のチームに入れてもらうのはかなりの狭き門です。

 

一方で、近年は外国籍の企業や団体などの参加も増えてきており、1艇あたりのクルーの人数が多いため、この関係者のツテを辿っていけば参加できる可能性があります。

ただし、それなりの練習が必要なので、長期滞在が可能な方のみが参加してくださいね!