フィリピン・マニラ首都圏のマカティ市にオープン間近のビルがあります。その名は「トランプ・タワー」。あのアメリカの次期大統領ドナルド・トランプ氏とブランド契約を結んだ高層マンションなんです!
このビルの開発会社会長が、フィリピン政府の経済分野の対米特使に任命されたそうです。誰もが予測出来なかった米大統領選の勝者を「フィリピンのトランプ」ドゥテルテ大統領はわかっていたのでしょうか?
ここでは、トランプがアメリカの次期大統領に決定したことでフィリピン国内に巻き起こっている「不安」についていくつか紹介してみたいと思います。
当然、トランプの政策に対する不安はフィリピン国内でも高く…
選挙中に、「テロ国家から人が入ってきている」とトランプ氏が批判した移民送り出し国に、フィリピンも入っているのです。
「これから、アメリカへの移住は難しくなるんじゃないか?」
「アメリカは保護主義が強まり、フィリピンにあるアメリカ企業のコールセンターなどは撤退していくんじゃないか?」
といった懸念もあります。
オバマ大統領やアメリカに散々悪態を吐いてきたドゥテルテ大統領ですが、本音では「アメリカと喧嘩なんかしたくない」と思っています。
正確に言えば、オバマやヒラリーには楯突くことができても、似た者同士のトランプとはケンカしたくないのです。
2人とも些細なことで悪口を言います。子供のようなところがあります。すごく感情的になるのです。ドゥテルテ氏も、自分がそれをやる分には構わない、でも、相手からやられるのは耐え難いようです。
物議を醸す2人のリーダーのもと、「南シナ海」の問題は今後どうなっていくのでしょうか?
フィリピン北部パンガシナン州の漁師たちは、11月から漁船で数十時間かかるスカボロー礁へと漁に出始めました。
2012年に中国が実効支配を奪った同礁近辺での中国側の妨害行為が、10月に開かれたドゥテルテと習近平国家主席の会談後、なくなったようにみえるからです。
一抹の不安を残しつつも、「今は大丈夫」のようだから、漁に行くしかないのです。
それでも、漁師たちは不安で仕方ありません。「もしアメリカが攻撃すれば中国は必ずやり返す。そうなれば、犠牲になるのはフィリピンの漁民なんだ!」結局、アメリカは南シナ海では何もできないに違いない…
2016年夏、常設仲裁裁判所は、南シナ海で岩礁の軍事拠点化を進めてきた中国の領有権主張を否定しました!
ここでドゥテルテがオバマとしっかり組み、中国の動きを抑えようとすれば良かったのですが、ドゥテルテはこの判決に対する議論を避け、中国に近づいていったのです。
(目先の中国資本に目が眩んだドゥテルテ…)
トランプは「アメリカが世界の警察官であることは難しい」とはっきり明言しています。
つまり、現時点では、米比軍事同盟を基礎に中国と向き合ってきたオバマ政権の姿勢が踏襲されるかどうかよくわからないのです。漁師たちをはじめフィリピン国民の多くは不安で仕方ないのです。
仮にトランプが南シナ海の問題から手を引けばどうなるのでしょう?
アメリカ不在となれば、フィリピンは中国のなすがままにされてしまうのは間違いないでしょう。
トランプという不確定要素は、南シナ海で権利を主張する小さな国々にとって、心配のタネなのです。