毎年、年間3,000万人もの外国人旅行者が訪れる観光大国タイ。この度 (2016年) のタイ国王の死去に伴い、しばらくの間は観光業に大きなダメージを与えそうです。
「娯楽は自粛しろ〜」との呼びかけで、人気の王宮は見学を制限し、夜の繁華街は閉店が目立っています。
他にも、ムエタイなどの格闘技や音楽イベントのほか、世界的にも有名な伝統行事の数々も中止となりました。
正直、旅行業者やホテルなどは頭を抱えています。
それでも、偉大なるプミポン国王が亡くなったことは本当にショックなことであり、タイ国民は皆悲嘆に暮れているのです。
バンコクの百貨店や大通りの電光掲示板などでは「天国へお見送りします」と追悼する言葉が繰り返し流され、ホテルや病院などでは外壁に黒い幕が垂れ下がっています。
タイには、海外から3千万人もの旅行者が訪れ、観光は国内総生産(GDP)の約1割を占めるほど重要な収入源。
しかし、代表的な観光名所である王宮やエメラルド寺院(ワットプラケオ)は、ひとまず国王の死から1週間は休館 (その後は未定)。
その他の観光名所も軒並み閉めている状態です。
タイのプミポン国王の死去から一夜明けた2016年10月14日、首都バンコクは静かな追悼の朝を迎えました。
駅の照明は落ち、音楽は消え、人々は黒を基調とした服に身を包んでいます。
「精神的な支えを失ってしまった」
「国政はこれからどうなるんだろう…」
多くの不安を抱えながら、タイ国民は亡き「国父」の冥福を静かに祈るしかないのです。
前日までは国王のイメージカラー黄色や、健康回復に繋がると信じられているピンクで溢れ返っていた街…
しかしこの朝は、バス停で多くの人々が白黒の号外に目を落とし、落胆に暮れていたのです。
まず、警察当局は、国王の死去直後から「社会を不安定化させる動きが出ないよう」、公共交通機関や政府関連施設、観光地などの警備を強めました。
テレビ各局は、バラエティーなど普段の放送を一斉に中断。政府の要請により、当面の間は国王の功績をたどる映像や音声を繰り返し流すそうです。
そして、
娯楽の自粛が呼びかけられる中、経済への影響を心配する声も多く漏れてきています。
洋服販売店勤務のサンヤンさんは、「景気の先行きが見通せず、今日からどんなことが起こるのか不安でならない。王位継承が着実に進み、普段通りの生活が少しずつ戻るよう願っている」と深刻な面持ちで語ってくれました。
2014年の軍事クーデターの夜でさえ、明かりを消さなかった市中心部の歓楽街。13日の夜から、風俗関連の店舗にも「閉店」の紙が貼られ、大半がシャッターを下ろしています。
30人ほどの女性を雇うバーの従業員は、「うちの娘たちは実家で小休止。軍の見回りがあるから、ライバル店の様子を見ながら数日は休む」と語っています。
バンコク北部にある国技ムエタイの競技場「ルンピニー・ボクシング・スタジアム」は11月中旬まで試合を見送ることを決定しました。
当然、コンサートなどのイベントも相次いで中止。若者たちが集うタイ南部のリゾート・パンガン島では、17日に予定されていた大規模パーティーに対して市が、「絶対に開かないように!」と通達した模様です。
伝統行事も例外ではありません。バンコクの繁華街サイアム・スクエア近くの王室寺院は、16日の祝祭「オークパンサー」の古典舞踊を取りやめます。
そして、
タイ北部チェンマイ市は、数万の灯籠(とうろう)を夜空に放つ恒例の「イーペン祭り」を中止することにしたのです。
(後で、やっぱり開催されることになりました)
この自粛の流れは日本にも少なからぬ影響を与えます。タイから日本への観光客はこの5年で4倍以上の年約74万人に伸びましたが、
大手旅行会社の予約担当者は「多くのタイ人が旅行を控え、日本への予約は半減した」と語っています。
それでも、予定通り旅行する人たちがいるのが不思議なくらいです。
タイ暫定政権のウィサヌ副首相は、死去したプミポン国王の王位を継承するワチラロンコン皇太子(64)が即位するまで、プレム枢密院議長(96)が摂政を務めると発表しました。
プレム氏は元陸軍司令官で、1980年から8年余りは首相職にも就いていました。プミポン国王からの厚い信頼があり、軍部への影響力もあるタイの最高実力者とも言えるでしょう。
本来であれば、国を早急に安定させるため、すぐに王位継承すべきところ、ワチラロンコン皇太子は「国民と悲しみを共にしたい」として即位手続きを「適切な時期」まで待つよう求めたのです。
国王が入院していたバンコク西部のシリラート病院には、黒と白の幕が張り巡らされています。周辺では、ひつぎの搬出を待つ人が朝早くから列を作り、警官隊が規制線を張って警戒にあたっています。
中庭には肖像画を掲げられ、祈りを捧げて夜を明かす人たちも大勢います。
「ご遺体が運び出されるまで少しでも国王の近くにいたい」と目を潤ませる人々。
国民から敬愛されていたプミポン国王のご冥福を心からお祈り申し上げます。