アジア各国で、シェアが下位のLCCは苦戦を強いられています。成長市場を睨んだ各社の路線拡張や料金引き下げの競争が激しく、優勝劣敗が鮮明になってきているのです。
例えば、「大阪・名古屋・福岡〜台北路線が片道3,300円から」と思い切った格安運賃をキャンペーンとして前面に打ち出してきた台湾のVエアは、予約開始からわずか半月で全線の運航を停止することを決定しました。
羽田や関西、中部のほか、茨城や那覇にも就航し、日本線を主力としていたVエア。しかし、ついに、料金競争に耐えきれなくなったようです。
中華航空も、傘下のタイガーエア台湾で運営するLCC事業の見直しに着手。「改善できないなら徹底もありうる」としています。
日台間の観光客需要が拡大するという想定は的中したのですが、日台路線では、ジェットスター・ジャパンやバニラも運航。想定を上回る価格競争に陥ってしまったのです。
明暗分かれるLCC
LCCは低運賃で運航するため、一般の航空会社より高い機材稼働率と搭乗率が要求されます。採算ラインとなる搭乗率は70〜80%と、一般に比べ10%ほど高くなっているのです。
前述したVエアやタイガーエア台湾などは頻繁に値下げ攻勢を仕掛けましたが、
本拠地の台湾桃園国際空港発着便での搭乗率は70%を割り込む月が多く、赤字は増すばかり。。。
一方で、人口増加と経済成長を追い風に、アジアでは旅客需要の伸びは続いています。燃料価格が低水準で安定していることも追い風となり、マレーシアのエアアジアやシンガポールのスクート、フィリピンのセブ・エア、インドのインディゴ、インドネシアのライオン航空などは業績を上げてきています。
さらなる競争激化!
しかしそれでも
アジア各地でLCCの供給は過剰気味…
今、各社はこの激戦を勝ち抜くため、燃料価格の下落分までも運賃に反映させてきているのです。
もはや限界ギリギリかもしれません。
経営体力のある大手の攻勢を受け、後発や小規模のLCCは苦しめられているのが現状なのです。
原油安の追い風もあり、2015年に不振から脱却したインドネシアのガルーダ・インドネシア航空は、2016年1〜6月期に再び赤字へと転落しました。LCC子会社のシティリンクが足を引っ張ったのです。
ライバルのライオン航空が運賃引き下げ攻勢を展開し、シティリンクからシェアを奪っていったのです。
有望市場のインドでも…
有望市場とみられていたインドでも、明暗がはっきりとしています。インディゴは伸び、ゴーエアとスパイスジェットのシェアは低下…
LCCの苦境は訪日客の誘致に影
各社に追い打ちをかけるのが人件費の上昇です。2030年のパイロット需要はおよそ98万人となり、2010年と比べ倍増する見通しだとか。
特に、アジアでは好待遇をエサに、人材を奪い合う構図が強まっています。機材の増加で償却負担もかさみます。
苦境に陥るLCCが増えれば、訪日客の誘致に影を落とすことはおろか、日本人が気軽にアジア旅をする機会すら奪われかねません。
2012年には、ベトナムのLCC「ベトジェットエア」が機内ダンスショー (ビキニで) のため罰金を科せられましたが…
そんな企業努力も必要なのかもしれません。
おわりに
日本では、全日空が「ピーチ」「エアアジア・ジャパン」を、日本航空が「ジェットスター・ジャパン」を設立し、そこそこ順調にいっており、ヨーロッパでは、LCCの会社が大手航空会社を上回る業績を上げている例も見られます。
勝者になりうるのか
それとも
敗者となってしまうのか
頑張れ!あなたの街のLCC!