タイで優雅な年金生活は可能か?バンコクからチェンマイに移り住むリタイアプアな日本人



「世界一の屋台街」として知られる福岡の博多…ではなくタイの首都バンコクから屋台が消えるようです。

すご〜く近い将来、「衛生」と「秩序」の両面から、バンコクの主要な道路から食べ物などを販売する露天商が退去させられることになりました。

 

「あぁ〜、タイの (大切な) 伝統文化が消えてしまう…」と世界の旅行者たちに衝撃を与えていますが、中でもショックを隠し切れないのは・・・日本からタイに移住してきた、貧困に喘ぐ日本人年金生活の高齢者たちです。

 

東南アジアはタイをはじめマレーシアやフィリピン、インドネシアなど、日本人高齢者の移住先として本当に人気があるのですが、、、

中でも、世界的な観光地としても知られるタイは「イスラム教国で、シンガポールに次ぎ物価の高いマレーシアや、治安の悪いフィリピンに比べ、日本と同じ仏教国という意味でも根強い人気がある」のです。

 

 

 

タイで優雅な年金生活を夢見たものの ・・・

物価が安く、日本から近く、さらに一年中温暖な気候に恵まれており、日本食にも事欠かない・・・と「優雅な隠居暮らし」を夢見てタイに移住して来る日本人が後を絶ちません。

しかしながら、「タイは物価が安く日本より優雅な生活ができる」・・・という夢物語はひと昔前のお話です。現在、タイでは物価が高騰し、国民の生活を圧迫し、大きな社会問題となっているのです。

 

 

特にバンコクは深刻です。想像以上の物価高騰で、年金生活を送る日本人高齢者たちは生活困難に陥り、「リタイアリッチ」の夢は「リタイアプア」の現実へと変わっていっているのです。

日本を去らざる得ない理由があったり、リタイアリッチを豪語して日本を去った手前、今更日本にも帰れず、、、夢打ち砕かれ、身寄りのない異国で孤独死するケースも珍しくはありません。

 

そもそも、物価高騰の最大の原因は2012年、インラック政権(当時)が実施した最低賃金の引き上げにあります。この人件費高騰に伴い、物価も急上昇したのです。そして、昨今の円安傾向が状況をさらに悪化させているのです。

数年前であれば、バンコクでラーメンを注文すると200バーツ(約700円)くらいでしたが、今は300〜400バーツと、2倍近くにまで跳ね上がっているのです。

(誰が食べるんだっ!?タイまで行ってそんな高いラーメンを…)

 

ちなみにバンコクでは、お馴染みの和風居酒屋や和食レストランで飲食すると、1人当たり2000~3000バーツ(約7000円から約1万円)も珍しくはありません。

 

 

 

日本より高くなった家賃…

日本では飲食店の二極化で激安店も存在していますが、バンコクは「日本よりも高くなってしまった」のです。

さらに、、、タイでは消費税(7%)に加えてサービス料(10%)が課せられるお店も多く、物価の高騰を肌で感じざるを得ない状況になっています。

 

 

今や、バンコクに住む年金生活高齢者たちにとって、日本食は高嶺の花となりました。おまけに、激安の屋台街に繰り出してみると、以前は麺類などが20~30バーツ(約70円から約100円)だったのが、今では50バーツ(約170円)に値上げされている始末なのです。

もし本当に、(計画通りに) バンコクの主要な道路から露天が撤去されれば、日本人の貧困高齢者たちの生活は一層困窮することになるのです。

 

そして困ったことに、物価の上昇は「食」だけでなく「家賃」にも及んでいます。先進国と比べると格安なのかもしれませんが、それでも年々上昇傾向にあるのです。

例えば、バンコクの日本人居住区でマンションを借りると3~4万バーツ(10〜13万円)が相場です。東京の都心…ではありませんよっ!バンコクでです!

 

 

 

どんどん物価が上昇していくっ!

もちろん、タイに移住する高齢者の中には企業年金と国民年金の両方を受給し、物価が高騰した今でも比較的余裕を持って暮らす日本人もいます。

それでも、日系スーパーで買い物をすれば「日本では1袋400円のみかんが800円(10個入)だったり、1個100円のりんごが200円だったり、1匹100円の秋刀魚やいわしが500円だったり、豆腐や納豆が1パック300円もして。。。」日本で生活するよりも苦しい台所事情に直面しているのです。

 

 

まして、タイに移住するリタイア高齢者の約半数は老後破綻した年金生活者…とみられています。年金が少なく、日本での生活苦から抜け出すためにわざわざ日本を脱出してきた人たちなのです。

そんな彼らは首都バンコクでの「リタイアリッチ」の夢を諦めざるを得ず、地方都市であるチェンマイやチェンライに「脱出」し始めています。なぜなら、バンコクよりも飲食費 & 住居費が安く済むからです。

 

特に今、タイで日本人のリタイアプアが多く住む地域はチェンマイです。そのため、日本の高齢化と同じようにチェンマイでは、「日本人の高齢化」「老人ホーム化」が進んでいます。

 

 

 

バンコクからチェンマイに移り住むリタイアプアな人々

タイの外国人退職移住者対象のリタイアメントビザは、申請条件が80万バーツ(約270万円)以上の銀行預金残高、あるいは、年金受給が6万5000バーツ(月々約21万5000円)となっています。

しかしチャンマイには、リタイアメントビザの申請条件に達せず、取得していない人たちもいます。彼らは、家具や家電付きのサービスアパートを月々5000~6000バーツ(約1万7000円から2万円)ほどで借り、食費を最小限に切り詰め、3万円以下の生活費で暮らしているのです。そんな人たちの多くは、年金支給額6~8万円の、日本にいたら低所得者の人たちなのです。

 

 

ちなみに、タイの大卒初任給は約1万5000バーツから約2万1000バーツ(約5万~7万円、首都バンコク勤務)なので、日本人のリタイアプアはタイでは低所得者層ではありません。

 

ただ、日本人として暮らすにはバンコクでは苦しすぎる、「そうだ、チェンマイに行こうっ!」となるわけです。そんなチェンマイには、日本人が肩寄せあって暮らす老人ホームのようなアパートが散在しています。

(日本人観光客も訪れる夜店の近くにある7階建てのアパートは、まるで日本の公営アパートさながらです)

 

 

 

万引きや強盗まがいも後を絶たず…

こうしたアパートの住民の多くは日本人リタイアプアの60〜80代の人たちで、建物内は小奇麗に清掃が行き届いています。家具、トイレ、ベット、バス付きで1泊から宿泊可能な部屋もあり、家賃は月々5000バーツ(約1万7000円)ほど。NHKも見られます。

そんな彼らの中には、(悲しいことに) 貧困から地元のスーパーで万引きをしたり、同郷である日本人を騙して食いつないでいる人たちもいるようです。

 

 

さらに、日本人の暴力団関係者が日本人を監禁・暴行し、お金をむしり取る犯罪も起きています。

心許した日本人の不動産スタッフが、日本人から相場の2倍ほどの値で住宅を売りつけたり、借金の抵当が設定されている物件を売りさばくケースも増えています。

 

バンコクのみならずチェンマイでも、日本人同士のトラブルからタイ人女性も絡んだ殺傷事件に発展するケースや、リタイアプアの人が比較的裕福な日本人を騙しお金を無心する事件が後を絶たないといいます。

 近頃は、タイ人から見ても身なりの貧しい日本人が街を闊歩していますので、(かわいそうだとは思いますが) あなた自身が被害を受けないように十分気をつけてくださいね。

 

 

 

おわりに

タイ政府は将来的に、国民所得の増加を計画しています。そんな中、最低賃金の引き上げが再び実施される可能性は否めず、そうなれば、さらなる物価 & 不動産の高騰は明らかです。

「バラ色のようなタイでのリタイア生活」は夢のまた夢。。。になってしまいかねませんね。

 

非常に残念ではありますが、今やタイは年金に頼る高齢者たちの移住先ではなくなりつつあるようです。実際、タイに限らず東南アジアでの移住、ロングステイの取得条件は年々厳しくなっています。

日本人の移住先として最も人気の高いマレーシアでも、ロングステイ用ビザ(MM2H、50歳以上)の取得条件は、(1) 1100万円の資産証明(不動産含まず)、(2) 約500万円をマレーシア国内の銀行に定期預金、(3) 月額約32万円の収入証明(手取り)」とハードルが高くなってきています。

 

もしかすると今後は、「移住」はリッチな中高年のためのもので、年金生活者が気軽にできるものではない…のかもしれません。

くれぐれも、積極的に海外移住や不動産を勧めてくる輩 (詐欺師) には気をつけてくださいね。