2011年、オランダで重度のアルツハイマー病女性(64)に安楽死が行われました。認知障害の進んだ患者に安楽死が行われたのは、オランダでも初めてのことだったのです。
オランダは2002年4月、世界で初めて安楽死を合法化しましたが、そのオランダで安楽死が認められるには、
・医師が治療不能と診断した病気
・極度の苦痛がある
・患者本人に完全な知的能力があるときに、安楽死を希望する意思を示していた
ことなどが条件になっているのです。
では、この女性の場合は?
条件を満たしていたのでしょうか?
このアルツハイマー病の女性は、症状が進行した状態が長期に及んでいました。そんな中で、数年前から安楽死を希望する意志を示していたのです。
今回の事例は、患者が明確に安楽死を希望していてもアルツハイマー病が進行した患者の安楽死を拒否し続けてきた医師たちへのメッセージとなることでしょう。
世界の安楽死問題をリードするオランダであっても、過去には「安楽死を自殺ほう助とみなし、関係者に禁固刑が言い渡された」こともあります。
2002年の「安楽死」合法化から15年、オランダでは、病気でなくても人生は「完結した」と感じている高齢者が自殺ほう助で死ぬ権利を法的に認めるよう、安楽死法の範囲を拡大する動きが出てきています。
「熟慮した末に自分の人生は完結したとの確信に至った人たちが、厳格な条件の下で、自身が選択した尊厳ある方法で生涯を終えられるようにすべきだ」
2017年春、オランダでは総選挙があるため、この提案が法案として審議される可能性は低いのですが、近い将来、この法案は審議され可決されていくのではないでしょうか。
オランダの隣国ベルギーでも、2002年に安楽死が合法化されています。
ベルギーにおいては
・他に合理的な解決法がない
・患者の苦痛が耐えがたく改善の見込みがない
・2人以上の医師が認めた場合
に限って「安楽死」が認められているのです。
その後2014年には安楽死の年齢制限が撤廃されました。これを受け、実際に17歳の末期患者が安楽死の処置を受けてもいるのです。
「幸いにも、(安楽死の)検討対象となる子どもはほとんどいないが、だからといって、子どもが尊厳を持って死ぬ権利を認めないということにはならない」
2014年の法改正で、ベルギーは末期症状にあるいかなる年齢の子どもにも安楽死が認められている世界でただひとつの国となっています。
ただし、安楽死の処置を受けられるのは、意識があり、合理的な意思決定が可能な場合に限られているのです。
2015年度に、オランダで実施された安楽死の件数は約5516件。全死亡者数の3.9%を占めました。
安楽死による死を選択した人たちの70%以上は「ガン」と診断された人たちです。
認知症や精神疾患の人たちは3%ほど。
オランダにおける安楽死の件数は、年々確実に増加し続けているのです。
安楽死は本当に繊細な問題で、特に未成年の末期患者も安楽死を選択できる、ということに対しては国際社会の中で非難の声も挙がっています。
しかし、
「耐えがたい苦痛」に年齢性別は関係ありません。
今後わが国でも「どうしていくべきなのか」真剣に議論しないといけない問題です。
相談機関や受け入れ体制が整えば、必然的に自殺抑制効果も出てくる、とも思うのですが…