タイのインラック前首相は、軍主導の暫定政権に対し「民政移管を早期に実現するよう」求めています。2014年にクーデターで政権を追われてから2年。
インラック氏はフェイスブックで「(クーデターは)人々の権利と自由が奪われた日だ」「軍事政権が人々に約束したことを覚えていることを期待するしかない」と述べています。
しかし、経済的な困難や貧困、麻薬のまん延を含めた重大な社会問題が人々を苦しめ続けており、タイ国内外での懸念は強まる一方です。
※ タイでは新憲法草案の是非を問う国民投票が8月7日に実施される予定 (2016年8月7日)
※ 軍事政権は2017年に総選挙を実施し民主的な政権に移行することを約束しています
裁判続くインラック氏
インラック氏は首相当時の「米買い取り制度」を巡り、「国に多額の損失を与えた」として職務怠慢の罪に問われ、今もタイの最高裁判所で裁判が続いています。有罪となった場合、最高で10年の禁錮刑が言い渡される可能性があるのです。
言論の自由なき軍事政権下のタイ
タイの軍事裁判所は、軍事政権への抗議活動を行っていた活動家に花を手渡した元教師の男性(77)に対し、5人以上の政治集会を禁じた軍政の命令に違反した罪で禁錮3か月、執行猶予1年、罰金4,000バーツ(約1万2,000円)の有罪判決を下しました (2016年5月)。
報道によると、この男性は昨年、首都バンコクで反軍政デモを行っていた活動家の1人に花を手渡し逮捕されたのです。男性は当初、「何も間違ったことはしていない」と争う構えを見せていたのですが、年齢や健康状態を考慮し、罪を認めることにしたといいます。
タイでは2014年5月のクーデター以降、軍政が軍事裁判所の裁判権を拡大し、命令違反や不敬罪などのケースで民間人を軍事裁判所で裁くようになりました。これに対し、「軍事裁判所は独立性や公平性に欠ける」として、国内外で批判の声が殺到しています。
タイランドへ「言論の自由」を!
女子バレーリオ五輪予選
リオデジャネイロ五輪出場をかけた、女子バレーの世界最終予選兼アジア予選が5月22日に閉幕しました。
参加8か国の中からアジア1位とそれを除く上位3チーム、計4チームに与えられる出場権は、日本、イタリア、オランダ、韓国の手に与えられました。
タイ代表チームは、たとえ最終戦で勝利しても「もう五輪に出場できない」。。。そんな中、最終日のペルー戦をストレートで勝利し、選手たちは泣い崩れていたのです。
「勝ってもオリンピックに出場できない。そんな悲しみの中で臨まなければならない試合は本当に難しく、本当に悲しかった」
4年前も後一歩のところでオリンピックに出場できなかったタイ女子バレーボールチーム。悲願の五輪出場に向け、チーム力を磨き上げ、多彩なコンビバレーの精度を上げ、万全の準備をして臨んだ今大会。しかし結果は…
日本 ×タイ戦、レッドカードはなぜ出されたか
5月18日の日本×タイ戦。どちらにとっても絶対に負けられない試合は日本が制しました。フルセットまでもつれ、しかも最終セットは6-12とタイが6点をリード。
「タイが勝った!」
「五輪出場に大きく近づいた!」
誰もがそう思っていました。しかし、今大会から採用されているタブレットがうまく機能せず、タイ側の訴えは受け入れられず「レッドカード」で計2失点…
両者にとってオリンピック出場のかかった大一番で、ましてや最終セットの終盤という大事な局面でのアクシデント!
タイのキャテポン監督が要求したはずのタイムアウトが通らない…
「誤作動だ」とキャテポン
「遅延行為だ」と審判
「なぜだ」とキャテポン
怒りと動揺は収まらず、コートの選手たちにも動揺が走り、ゲームの流れは一気に日本へと傾きました。
6点あったリードを失い、監督は交代させたセッターを再びコートへ戻そうと「選手交代」を要求しますが、またもタブレットによるリクエストは通らず。。。
「チクショ〜!」
「あっ、日本選手がセンターラインを踏み越したぞ!」
そう意義を唱えるも、審判は「踏み越したのは足ではなく手なのでルール上はOK」と却下。さらに抗議を続けた監督に2枚目のレッドカードが提示され、14-12、マッチポイントとなった日本が奇跡の大逆転勝利を収めたのです。
試合後、キャプテンのプルームジット・ティンカオは「一生忘れることはない」と涙で言葉を詰まらせていました。
試合の勝敗が覆ることはありません
愛すべきチームの涙を無駄にしないために
ロンドンからリオまでの4年のみならず、タイはキャテポン監督のもと、ユース、ジュニア年代から共にプレーしてきた選手たちが長い時間をかけて作りあげてきたチーム!
同じアジアで対戦機会の多い日本に対しても、常に尊敬の念を持ち、悔しい敗戦の後でも「日本は素晴らしかった」といつも称えてくれていました。
日本の選手やスタッフのみならず、取材を通して接してきた日本の記者やフォトグラファーも、タイチームがとても好きでした。「できるなら共にオリンピックで戦いたい!」心からそう思える素晴らしいチームだったのです。
ペルーとの最終戦を終えた後、キャプテンのプルームジットはこう述べています。
「私たちは毎回毎試合、全力で戦いました。でも、オリンピックの出場権は獲得できませんでした。出場権を獲得したチームの勝利を、心から祈ります」
彼女たちの声を、涙を、無駄にしないためにも、新システムの再考と、五輪出場権を手にした4チームが活躍することを心から願うばかりです。
そして、軍政から民政に早く移行し、「言論の自由」あるタイランドになってもらいたいものです。