ASEANの主要国であるタイはここ数年、軍部のクーデターなどにより経済的には停滞が続いていますが、プロゴルフ界では男女ともに世界のトップレベルで活躍するほどの躍進目覚ましい状態です。
2016年5月、全米女子ツアーで3連勝を飾りトップ選手に仲間入りしたアリヤ・ジュタヌガンはまだ20歳。実姉のモリヤも同じ米ツアーを主戦場としています。

日本の女子ツアーでは2013年にO・サタヤがタイの選手としては初の優勝を飾り、

男子では日本のシニアツアーで、プラヤド・マークセン (50) が賞金レースを独走しています。

現在、タイ出身の男子プロゴルファーは世界ランキング300位以内に7人がランクインしており、アジアでは日本、韓国に次ぐ多さなのです。
タイにはもともと多くのゴルフ場があり、多くの海外旅行者がゴルフを楽しんでいましたが、今では、一流ツアープロの輩出国になりつつあるのです。
タイは1年中温暖な気候であり、タイガー・ウッズの母親がタイ人でもあります。しかし、タイのプロゴルファーたちがこれほどまでに目覚しい活躍をする理由はそんなことではありません。
一つには、あの「シンハービール」の手厚いサポート体制があります。
ほとんどのタイ選手たちのシャツに刻まれている獅子のエンブレム。そう、タイを代表するビールブランド「シンハービール」です。
「シンハービール」はプロゴルフの支援に積極的で、契約選手には月数万円の給料を支払っています。その他、トップツアーを戦う際の遠征費を負担しているのです。
近頃では「チャーン」というビール会社も彼らをバックアップし始めました。日本にはないシステムです。
各国を巡るゴルファーたちにとって、遠征経費はかなりの負担。これを援助してもらえることは非常にありがたいことなのです。
タイのプロゴルフ盛行の秘密はそれだけではありません。彼らが躍進を続けるもう一つの理由は、タイ国内で多くのツアーが開催されていることです。
タイには年間10試合以上を開催するツアーがあり、アジアをはじめトップツアーを目指す若手の登竜門となっているのです。
これらの試合には、マークセンをはじめ欧州でも活躍するトンチャイ・ジェイディといったスター選手が積極的に出場しています。

優勝賞金が50万円にも満たない小さな試合なのですが、下にいる選手たちがトップクラスのプレーを間近で見られる良い機会となっているのです。
それに、女子の選手たちは男子とほぼ同じ環境で練習しています。必然的に鍛え上げられていくのは当然の結果とも言えるでしょう。
タイの国内ツアーで腕を磨いた後は、日本などのアジアツアーに出る必要もなく、すぐに海外のトップツアーに参加することだってできるのです。
日本では、『日本ツアーである程度成績を残してからでないと海外に行っても仕方がない』という考え方があるようですが、タイの選手たちにそんな考えはありません。
例えば、タイのチャプチャイ・ニラトという選手は日本に来て『寒すぎる! 』と言ってすぐに帰っちゃいました。

しかし、その後に参加した欧州ツアーで優勝してしまったのです (2007年)。
島国で育った日本人にとっては、タイ人以上に世界が広く感じられているようです。
私たちも、彼らタイ人に学び、積極的に海の向こうに飛び出していかねばなりませんね。海外には、人をタフにする無形の財産がまだまだ残っていそうです。