ユネスコ (国際連合教育科学文化機関) の設立後、1954年にはハーグ条約が採択され、「武力紛争の際にも文化財に対する破壊行為は行うべきではない」ことが打ち出されました。
つまり、世界遺産 (World Heritage Site) は、1972年のユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づいて世界遺産リストに登録された「遺跡」「景観」「自然」など、人類が共有すべき普遍的価値のことなのです。
まず、2017年時点での世界遺産に関するデータを見てみましょう。
ウズベキスタンの世界遺産イチャン・カラ
◉ 世界遺産条締約国……193か国
◉ 締約国のうち世界遺産を持たない国……26か国
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【世界遺産】
◉ 世界遺産総数……1073件
◉ 文化遺産……832件
◉ 自然遺産……206件
◉ 複合遺産……35件
◉ 危機遺産……54件
◉ 登録を抹消された世界遺産……2件
【無形文化遺産】
無形文化遺産とはユネスコが2006年に創設したもので、「芸能」「祭り」「伝統工芸技術」などが対象となっています。
日本においては、「歌舞伎」「京都の山・鉾・屋台行事」「和食」など、20数件が登録されています。
【世界の記憶】(世界記憶遺産)
「世界の記憶」はユネスコが主催する事業の一つで、危機に瀕した古文書や書物などの歴史的記録物を保全し広く公開することを目的とした事業のことです。
ただ、日本国内では「筑豊の炭鉱画」「慶長遣欧使節関係資料」「シベリア抑留の記録」などが登録されていますが、イマイチ盛り上がっていない分野でもあります。
一方で、中国が「南京事件に関する資料」を登録したり (登録済)、韓国が「日本軍の従軍慰安婦関連資料」を登録しようと目指していたりと、「世界遺産」本来の目的とは違う政治・外交手段に利用されつつあります。
◉ 世界の記憶……301件
このうち、
◉ 日本の「世界の記憶」……5件
世界遺産に関しては、圧倒的に「文化遺産」の割合が高いですね。
この理由としては、自然遺産は範囲が広く保護が難しいことが考えられます。

《続きを読む》(2017年時点)
☆ 1位 ・・・ イタリア (53件)
★ 2位 ・・・ 中国 (52件)
☆ 3位 ・・・ スペイン (46件)
★ 4位 ・・・ フランス (43件)
☆ 5位 ・・・ ドイツ (42件)
★ 6位 ・・・ インド (36件)
☆ 7位 ・・・ メキシコ (34件)
★ 8位 ・・・ イギリス (31件)
☆ 9位 ・・・ ロシア (28件)
★ 10位 ・・・ アメリカ (23件)
☆ 11位 ・・・ イラン (22件)
★ 12位 ・・・ 日本 (21件)
☆ 12位 ・・・ ブラジル (21件)
★ 14位 ・・・ オーストラリア (19件)
☆ 15位 ・・・ ギリシア (18件)
★ 15位 ・・・ カナダ (18件)
☆ 17位 ・・・ トルコ (17件)
★ 18位 ・・・ ポーランド (16件)
☆ 19位 ・・・ スウェーデン (15件)
★ 19位 ・・・ ポルトガル (15件)
◉ 21位 ・・・ ベルギー (13件)
◉ 22位 ・・・韓国、スイス、チェコ、ペルー (12件)
◉ 26位 ・・・ アルゼンチン (11件)
◉ 27位 ・・・ オランダ、オーストリア、クロアチア、ブルガリア (10件)
◉ 31位 ・・・ イスラエル、エチオピア、キューバ、デンマーク、南アフリカ、モロッコ (9件)
◉ 37位 ・・・ インドネシア、コロンビア、スリランカ、チュニジア、ノルウェー、ハンガリー、ベトナム、ルーマニア (8件)
◉ 45位 ・・・ アルジェリア、ウクライナ、エジプト、スロバキア、セネガル、タンザニア、フィンランド、ボリビア (7件)
◉ 53位 ・・・ ケニア、シリア、チリ、パキスタン、フィリピン (6件)
◉ 58位 ・・・ イラク、ウズベキスタン、エクアドル、カザフスタン、コンゴ (旧ザイール)、ジンバブエ、セルビア、タイ、パナマ、モンゴル、ヨルダン、リビア、レバノン (5件)
◉ 71位 ・・・ イエメン、オマーン、コスタリカ、コートジボワール、サウジアラビア、スロベニア、ネパール、ベラルーシ、マリ、マレーシア、モンテネグロ、リトアニア (4件)
◉ 83位 ・・・ アルバニア、アルメニア、ウガンダ、カンボジア、キプロス、キルギス、グアテマラ、ジョージア、スーダン、トルクメニスタン、ニジェール、ニュージーランド、バングラディシュ、パレスチナ、ベネズエラ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、マダガスカル、マルタ (3件)
◉ 101位 ・・・ アイスランド、アイルランド、アゼルバイジャン、アフガニスタン、ウルグアイ、エストニア、カメルーン、ガンビア、ガーナ、北朝鮮、スリナム、セーシェル、タジキスタン、チャド、中央アフリカ、ナイジェリア、ナミビア、ニカラグア、バチカン、バーレーン、ブルキナファソ、ベナン、ホンジュラス、ボツワナ、マラウイ、モーリシャス、モーリタニア、ラオス、ラトビア (2件)
◉ 130位 ・・・ アラブ首長国連邦、アンゴラ、アンティグア・バーブーダ、アンドラ、エリトリア、エルサルバドル、カタール、カーボヴェルデ、ガボン、キリバス、ギニア、コンゴ共和国、サンマリノ、ザンビア、シンガポール、ジャマイカ、セントクリストファー・ネーヴィス、セントルシア、ソロモン諸島、トーゴ、ドミニカ共和国、ドミニカ国、ハイチ、バヌアツ、バルバドス、パプアニューギニア、パラオ、パラグアイ、フィジー、ベリーズ、マケドニア、マーシャル、ミクロネシア、ミャンマー、モザンビーク、モルドバ、ルクセンブルク、レソト (1件)
世界一美しい海岸「アマルフィ」(イタリア) は世界遺産です♡ 《続きを読む》ユネスコの世界遺産国別登録数で、飛躍的に躍進してきた中国を抑え、イタリアが首位の座をキープし続けています。というわけで1位はイタリアです。 イタリアは1993年以来、ほぼ毎年確実に世界遺産を増やし続けています。
一方で中国は急速に登録数を増やし続けており、2013年にはスペインを抜いて2位に!2015年には首位イタリアに1件差にまで詰めてきています。
このところの中国の登録件数はダントツで、10年で17件。ちなみに日本は7件なので、ここ10年で10件も差が開いてしまいました。
★ ここ10年の登録数国別ランキング
- 1位 ・・・ 中国 (17件)
- 2位 ・・・ イラン (14件)
- 3位 ・・・ イタリア (12件)
- 3位 ・・・ フランス (12件)
- 5位 ・・・ ドイツ (11件)

《続きを読む》世界遺産に対する力の入れ方は国によって異なります。たとえばアメリカは、1996年以降2010年まで登録がありません。
アメリカはユネスコの政治的介入を嫌って1984年に脱退しており(2003年復帰)、その後もオブザーバーとして参加し登録数を増やしていたのですが、イエローストーンの保護などを巡ってユネスコと対立し、登録を停止してしまいました。
その後もパレスチナのユネスコ加盟や「イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路」の世界遺産登録に反対しており (2012年) 拠出金を停止。。。翌年にはユネスコの投票権を喪失しました。
そんなこともあり、全体的な傾向としてはヨーロッパの登録数が多く、また、ヨーロッパでない場合でも、そのほとんどは先進国が占めています。
つまりは、世界遺産の多い国が毎年のように登録数を重ねる一方で、そうでない国はなかなか増やせていないのが実情です。
ヨーロッパ諸国に世界遺産が多い理由はなんとなくわかります。だって、その背景に、
「クロマニヨン人の文化 → エーゲ文明 → ギリシア・ローマ文化 → ゲルマン人の文化 → キリスト教文化 → ルネサンス → 大航海時代 → 産業革命」と、時代時代を彩る建築物や多彩な文明が多数存在しているからです。
また、中国やインドなども同様で、各時代・各地方に多数の民族・宗教・文化が存在し、むしろ統一されていた時代の方が短いほど。そんな多彩性が、多くの世界遺産を生んでいるのです。
一方で、途上国はそのような多彩性に乏しく、残りにくい土や木の文化を持っている、とも言えるでしょう。
つまり、世界遺産登録における課題の一つは、こうした (登録) 地域の隔たりを改善させていくことにあるのではないでしょうか。
正直、日本の富岡製糸場などは「国の重要文化財でこそあれ、世界遺産登録はいかがなものか」と考えている人も少なくないと思うのです。
最後に。。。
華やかで美しい世界遺産にばかり目がいきますし、そういった場所に旅行に行きたくなる気持ちもよくわかりますが、
「原爆ドーム」や「アウシュヴィッツ = ビルケナウ強制収容所」「ビキニ環礁の核実験場」といった負の遺産にも注目し、これらを絶対に忘れない気持ちも大事です。
皆さんの力で、真の遺産をしっかりと守っていきましょうね ☆