【新型コロナウイルス】 「海外旅行」に対する各国の対応は?



感染予防の先進国である「台湾」ではアフターコロナの観光を見据えて、旅行業界関係者向けのツアーを実施することにしています。また、国内観光が回復している「中国」では、ビフォーコロナとアフターコロナでは旅に求めるものが随分変わったと言われています。「韓国」はアメリカとの航空路線を再開させましたが「日本」はまだ先のことになりそうです。

 

中国

2020年5月中旬、武漢〜成田空港間の貨物臨時便が運航を再開させました (武漢は4月8日にロックダウンを解除し工場の操業も再開させています)。こうした中、中国全土では国内観光の回復が加速してきています。中国では5月19日が「観光の日」で、この前後1週間の間、多くの観光地のチケットが半額もしくは無料となりました。中国ではこうした旅行消費者の需要を刺激する動きが急速に広がっています。こうした動きもあってか、中国人観光客の意識にも変化が現れてきているといいます。以前は「訪問地」を重視していたのに、現在は「体験」を重視する傾向にあるようです。一方で観光地側もこれまでのように良い商品やサービスを提供するだけでなく、いかに安心・安全な旅行を提供できるかに注力しています。日本との間ではまだ国境が開かれていませんが、「上海~成田」間の7月1日以降の予約はすでに満席状態だといいます。(夏に実施されるであろう) 入国規制の緩和に備えて、フライトを予約する動きが活発化しているようです。

 

 

韓国

韓国では、第1四半期の業績が大幅に悪化した航空各社が立て直しに向けて動いています (5月に一部再開させている国際旅客便の運航を6月以降さらに増やす予定)。大韓航空の第1四半期の営業損失は2000億ウォン (約174億円) と予測されており、まずは貨物とビジネスの需要で挽回を目指す考えのようです。一方で韓国のLCCは、各国の入国制限措置の緩和を期待して、一部路線ではすでに予約の受け付けを始めています。ちなみに日韓両国間でのビジネス目的の入国についてはまだ議論が行われていません。5月中旬に行われた日・中・韓のオンライン会議 (保険担当相) では科学者・医師・ビジネスマンなどの移動を広げていくことが提案されましたが、日本は「自国内の感染状況が改善するまで入国制限の緩和は難しい」としています。

 

 

台湾

台湾政府は、新型コロナウイルス感染症の状況が台湾と中国で抑制されていることから、10月1日から「入境」と「国際観光」への規制を緩和する方向で検討を始めたようです (台湾と中国を結ぶ航空路線は5月現在、北京・上海・廈門・成都と台湾を結ぶ路線のみ運航されています)。マスクの着用や体温測定などの義務も状況をみて解除していく予定だといいます。

 

🔴 防疫旅行 (5/27〜7/31)

🔵 安心旅行 (8/1〜10/31)

 

 

ベトナム

ベトナムはSARSや鳥インフルエンザの経験を踏まえて、新型コロナウイルスの感染者数を300人台 (死者数0) に抑え込んでいます。早い段階 (1月下旬~2月上旬) で水際対策に着手したことが功を奏したようです。現在はすべての外国人へのビザ発給を停止しており、海外からの入国制限措置をとっています。これを踏まえてベトナム政府は、ベトナムが「安心・安全な国」であることを世界にアピールし観光につなげていこうとしています。併せて、国が管理する遺跡や観光地などの入場料を半額にすることや、観光業に対する付加価値税(VAT)を10%から5%に、法人税を22%から15%に引き下げ、夏休み期間を8月中旬から9月中旬までの約4週間にすることなどを決めました。また、アジア諸国でコロナが収束したら優待パッケージを盛り込んだ「Vietnam NOW – Safety and Smiling」キャンペーンを実施する予定だといいます。特に訪越旅行者数の多い中国・韓国・日本などで展開していく予定です。参考までに、ベトナム観光業界が今回の新型コロナでこれまでに受けた被害は77億USドル (約8,250億円) と試算されています。

 

 

タイ

タイではショッピングモールやレストランなどへの規制が緩和され営業が再開される一方で、酒類の販売は引き続き禁止されています (5月現在)。バーやパブなどの営業は認められておらず、マッサージ店や映画館なども引き続き規制対象となっています。さらに店舗営業の再開に合わせて、QRコードを使った「入退店管理システム」を導入しています。また、ホテル・飲食店の衛生状態を示す認証制度も導入しており、これによって観光客に対する安心・安全の取り組みをより確実なものにしていこうと努力しています。休止していた国内線の運航は5月1日から再開されましたが、国境の多くは今も閉鎖されたままとなっています。現状、外国人の入国が認められていないため、観光スポーツ省は国内旅行促進に向けたキャンペーンを積極的に行い、2020年度の国内旅行を1億件に増やすことを目標としています。また、今後タイを訪れる外国人旅行者には最大300バーツ (約1,000円) の課税導入を検討しているとのことです。そしてタイの航空会社は「不確定要素がある」としながらも、7月1日以降の一部の国際線の予約受付を開始しました。この中には東京 (羽田週4便、成田週4便)、大阪 (関西週3便)、名古屋 (中部3便) も含まれています。

 

 

ヨーロッパ

夏のバカンスシーズンを前に、欧州連合 (EU) は移動制限の緩和に動き出しています。 「これ以上移動制限はできない」・・・なぜなら、EU経済が大打撃 (GDPの10%) を受けてしまったからです。旅行中のマスク着用は強く推奨されますが、「チケットのオンライン購入」や「入場制限」「旅行中に症状が出た場合の対策」などを行うことでウイルスとの共存を目指しているようです。ちなみに制限緩和の判断は各国に委ねられることになりそうです。

 

(観光復活へ前向きな国)

◉ ギリシャ・・・6月中旬から観光客受け入れの再開を目指す

ギリシャへの観光客は3400万人 (2019年度)。GDP (国内総生産) の約3割は観光関連産業が占めており、早期に再開したい意向を示しています。財政破綻に陥ってから10年間、経済的混乱を繰り返してきた同国にとって、観光業を救うことは喫緊の課題となっています。

◉ ドイツ・・・国境封鎖を段階的に緩和させ、6月中旬までに開放することを目指しています。

◉ イタリア・・・コンテ首相は制限を大幅に緩和して、6月上旬からEU諸国からの入国制限を解除することを発表しました。

◉ トルコ・・・2020年夏季から「ヘルシー・ツーリズム認証」プログラムを開始することを発表しました。

この認証プログラムは①旅行者の健康と安全、②従業員の健康と安全、③各施設における予防措置、④輸送機関の予防措置  の4項目で構成されており、国際機関がそれらの要件を満たしていることを証明するものです。トルコでは近年ヘルス・ツーリズムに力を入れており、2018年には100万人が治療目的でトルコを訪れています。

◉ その他

チェコはオーストリアとスロバキアの国境を6月上旬に開放する予定です。バルト三国ではすでに5月15日から互いの国境を開放し、「トラベルバブル」を構築しています。スイスはパンデミックの状況を見ながら、6月15日にイタリア以外の近隣諸国との国境を開く計画を立てています。ポルトガルでも6月中旬に規制が緩和される可能性があり、旅行業界は動き出しています。

 

一方、新型コロナウイルスの爆発的拡大を経験した国は「まだ急いで多くの観光客を受け入れる段階ではない」と考えているようです。

 

(慎重な国)

◉ スペイン・・・「7月までは海外からの旅行者を受け入れない」としています。

◉ イギリス・・・2020年1月末にEUを離脱したイギリスは、欧州委員会で開かれた国境再開のための協議に呼ばれることなく蚊帳の外に置かれました。

そんなイギリスはアメリカ・ロシア・ブラジルに次ぐ感染者数過多の国の一つで、おのずと慎重にならずにはいられません。

 

 

おわりに

世界は1つに繋がっています。持続可能な世界を目指すことは単なる「意識の高い人たちの運動」ではありません。「美しい世界」「安全な世界」が持続していかなければ、庶民の観光旅行は消滅してしまうのです。そこで私たちは「新しい世界」と「新しい観光」を作るために「具体的に何をすればいいのか」を考える必要があります。もう少し安全になったら、訪れる人も迎える側も、共に満足度の高い旅ができるようにしていかなければならないですね。