被爆者願う「核兵器禁止条約」!板挟み日本政府の対応はいかに



「核兵器を違法にしよう!」

広島・長崎の被爆者たちが長年悲願としてきた「核兵器禁止条約」に向け、国連での議論が大詰めに入ってきました (2016年末)。

 

ほとんどの国が核兵器廃絶を望む中、アメリカ・ロシアなどの核保有国は禁止に反対。

今まさに、「核なき世界」への歴史的な岐路に立っています。さあ、どうする日本政府!先頭に立って、核兵器廃絶への道を切り拓いていけるのでしょうか!?

 

唯一の被爆国である日本の立場はいかに?

 

 

 

平和を願う世界の動き

「核兵器禁止条約」の推進派は、アジアや中米諸国を中心に支持を取り付け、賛成多数での採択に期待を込めています。

一方の核保有国は条約反対のロビー活動を展開するも、非保有国の結束を崩すまでには至っていません。

 

推進派は、2016年中の採択を目指しているのです!

「決めるぞ、お~~~!」

 

仮に、反対派のロビー活動によって「棄権」が増えたとしても、反対に回ることはないでしょう。

 

決議案の共同提案国オーストリアのハイノツィ駐ジュネーブ国際機関代表部大使は、採択に自信を見せています。

そして、「非人道的破壊をもたらす核兵器が安全保障をもたらすことはない!」と断言しています。

被爆者願う「核兵器禁止条約」!板挟み日本政府の対応は

一方、核保有国五大国は「核軍縮と安保は切り離せない」との立場を堅持し続けているのです。唯一の被爆国でありながらアメリカの「核の傘下」にある日本もこれに同調しています。

日本政府はバカなのでしょうか?

 

国連総会 (193ヶ国) は多数決で決議を採択するため、核保有国や核の傘下にある国々が中心の反対派約20ヶ国にとっては圧倒的に不利な状況です。

すでに、東南アジア諸国連合(ASEAN) やカリブ共同体 (カリコム) 、オセアニア諸国、中東諸国などは条約交渉開始への支持を相次いで表明しています。

 

本会議での正式な採択は2016年12月になる見通しです。

日本も、アメリカの核の傘下から抜け出し、「核兵器廃止」に向けて動き出すときなのではないでしょうか。

 

 

 

「化学兵器」「地雷」はすでに禁止されている

国際社会には、人道的な見地から化学兵器や対人地雷などの武器の保有や使用を条約で禁じてきた実績があります。

大国が加わらなくても成果を上げてきており、有志国や非政府組織 (NGO) を中心とする市民からは「核兵器も非合法化すべきだ!」との声が強まっています。

 

1997年発効の化学兵器禁止条約 (CWC) は開発や生産、保有を禁じています。

条約に基づき設立された化学兵器禁止機関 (OPCW) は、内戦続くシリアの化学兵器の全廃計画に取り組み、ノーベル平和賞を受賞しました。

生物兵器も条約で既に禁止されており、大量破壊兵器で残るのは核だけ…

被爆地長崎から平和を祈る被爆者遺族

1999年発効の対人地雷禁止条約 (オタワ条約) 、2010年のクラスター弾禁止条約 (オスロ条約)に続き、遅ればせながらやっと、「核兵器禁止条約」の制定が現実味を帯びてきたのです。

 

地雷やクラスター弾の禁止条約にはアメリカ、ロシア、中国などの大量保有国は参加していませんが、しっかりと、大国抜きでも両兵器の使用を減少させる効果を上げてきています。

もちろん、最終的には核保有国を含む枠組みが必要ですが、先に「核は悪い」と宣言することが重要なのです。

 

 

 

しかし課題も山積み

「核兵器禁止条約」の制定交渉は2017年に始まることになるでしょう。しかし、具体像が見えていないのが現状なのです。

まずは使用を違法とするなど、簡素な形で発効させ、細部は順次補完、核廃絶の議論を活性化させつつ、少しずつ前進させていくしかありません。

 

中米コスタリカなどは、1997年、核兵器の使用や威嚇、開発、実験などを禁止する「モデル条約」を国連に提出しています。

これは「核使用は国際法や人道法に反する」とした1996年の国際司法裁判所の勧告意見を踏まえたものです。

被爆者願う「核兵器禁止条約」!板挟み日本政府の対応は

しかし、未だ具体的な制定交渉には至っていません。

禁止条約は、あくまでも核廃絶の手段の一つであり、停滞する議論を変える一歩にすぎません。

 

制定を目指す今回の動きでは、まずは使用禁止などに絞って条約を発効させ、細部の補完や核保有国の取り込みなどは追って進める方針です。

禁止に反対している核保有国不在では、条約の実効性が懸念されますが、国際法ではルール作りを先行させる例も多くあります。

 

米中が批准せず未発効の包括的核実験禁止条約 (CTBT) や、米ロ抜きで発効した「対人地雷禁止条約」なども、事実上の国際的規範を作り出してきました。

残念ながら、核廃絶へ向けた現行の核拡散防止条約 (NPT) 体制は形骸化が進んでいますが、2020年に予定されている次回の再検討会議前に「核兵器禁止条約」が発効されれば、「核廃絶」もあり得るかもしれません。

 

 

 

保有国抜きでも効果はある!

非政府組織 (NGO) の連合体、地雷禁止国際キャンペーン、クラスター弾連合の代表を兼務するミーガン・バークさんは、

「対人地雷禁止条約は最も成功した軍縮条約の一つ。保有国抜きでも、禁止条約は効果を発揮するんです」と語っています。

 

アメリカは、韓国防衛用に朝鮮半島で地雷が使えるようにしておくため条約に参加できないとしています。代わりに、朝鮮半島以外では地雷を使わず、製造や輸出はしないとの政策を採っています。

地雷もクラスター弾も、そして核兵器も、間違いなく人道法に反しています。絶対に禁止されるべきなのです。

 

 

 

日本政府の選択はいかに…

被爆地広島長崎から世界平和、核兵器廃絶を訴えよう

さあ、いよいよ「核兵器禁止条約」の制定を巡る議論が熱を帯びてきました。条約賛成派が提出した決議案採決の際、唯一の被爆国日本は難しい選択を迫られます。

なぜなら、核廃絶を訴えながらもその実、アメリカの核の傘下にあるからです。まさに矛盾だらけであり文字通りの板挟み状態にあるのです。

 

条約採決に反対すれば、長年「核廃絶運動」をしてきた被爆者たちを失望させてしまいます。

一方、条約採決に賛成すれば、アメリカから「日本はアメリカに守られているのに何を言ってるんだ!」となってしまいます。

 

結局、無難にやり過ごすためには「棄権」しかないのです。

 

しかし今、日本の世論には「核禁止条約」を求める声が渦巻いています。現に、原爆投下から70年以上経った今でも、被爆者たちは毎年1万人近くもの人たちが亡くなっている状態なのです。

このことは、幼少期に被爆し、身体・精神に障害を抱えたまま一生過ごすことを余儀なくされた人々がこんなにも多く残っているということなのです。

 

現状、アメリカの核の傘下に依存する日本の安全保障政策に変化は見られません。

同じく、アメリカの核の傘下にある北大西洋条約機構 (NATO) や韓国などは、「核兵器禁止条約」の採決に反対するかもしれません。

 

しかし、

日本は唯一の被爆国として、やはり「核兵器は絶対によくない!なくすべきだ!」と強く主張し、採決に賛成すべきなのではないでしょうか。

 

アメリカに守られなくてもいい…
戦争も紛争もない理想郷の世界を目指して!

 

最終的には「軍隊や武器のない世界」にしていきたいものです。