イランで多発する「女性を狙ったテロ」の原因は逆恨み



アメリカのトランプ大統領が「イランの革命防衛隊 (精鋭部隊) は国際テロ組織だ」と激しく非難する一方で、イラン側は「米国こそがテロ支援国家」「世界のテロリズム指導国だ」と応酬。

そんなイランに、かつて「世界の半分」とも謳われ、今も数多くの歴史遺産が残る古都イスファハンがあります。この町で、信号待ちをしていた女性ドライバーたちが車窓から強酸性の液体を浴びせられ、顔などに大火傷を負う事件が多発。

これはアシッド・アタック (酸攻撃) と呼ばれるもので、近年は毎日2件ほどの高頻度で起こっているようです。

 

多発する連続通り魔事件

イスファハンでの酸による連続通り魔事件の犯行は (グループや組織ではなく) 個人によるものであり、容疑者の特定が難しいとされています。かつてこの事件を大々的に取り上げた海外メディアは、被害者の女性たちがイスラムの服装基準である「ヒジャブ」を正しく着用していなかったことから、保守過激派の標的にされた可能性が高いと「宗教的背景」を強調していました。

また、「イラン特有の女性蔑視の犯罪である」と報じるメディアもありました。こうした海外メディアの報道に反発した国内の保守系メディアは、「アシッド・アタックはインド、バングラデシュ、アフガニスタン、カンボジアなどのアジア諸国や南アメリカ諸国でも多発している」「イギリスでも起きている」とイランだけの問題ではないことを強調しています。

とはいえ、見過ごせない事態となってしまっているこの状況にイラン政府は「被害者の治療費を最大限負担する」と公言しています。

 

 

事件の多くは恋愛のもつれから?

実のところ、アシッド・アタック (酸攻撃) の多くは恋愛のもつれや求婚拒否への復讐から起こっているとも言われています。しかしなぜ、イランではこれほどまでにアシッド・アタックが多いのでしょうか。答えはこうです ↓

「酸は銃よりも簡単に手に入る」「ナイフを使うより抵抗なく人を傷つけられる」

 

イランにはキサース刑 (同害報復刑) というものがあり、銃で殺してしまったら自分も死刑になるのです。酸攻撃であれば、相手が死ぬことはないだろうから捕まったときの心配が少ないというわけです。

こうしたわけで、女性の顔を標的とするアシッド・アタックの多くは、イランでの事例に限らず、恋愛トラブルの復讐・腹いせとして行われることが多いようです。

 

 

あまりにも簡単に入手できる酸

殺すことなく相手の「美」を奪い一生を台無しにするという卑劣な目的からすれば、酸の利用は理にかなっていると言えるでしょう。そういった意味では、男性同士の怨恨の果てに被害者が男性になってしまうこともあり得ます。

とはいえ実際のところ「酸攻撃」は、乗用車など物品の損傷が一番の目的となっているようです。やはり、キサース刑が怖いのでしょうか。それなら、わざわざ酸を用いなくてもいいのではとも思ってしまいます。

 

でもイランでは、あまりにも簡単に酸が手に入るんです。購入時に、名前や使用目的を訊かれることはありません。単なるイタズラとして、学校の先生の車に酸をかける生徒たちもいるようです。やられた方はたまりません。愛車のペイントが完全に剥がれ落ちてしまうのですから。

このようにイランでは、最も危険な純度96%の硫酸でさえ、1ガロン (4ℓ) を1500円ほどで買うことができるのです。

 

 

おわりに

世論は政府に対して「酸性液の販売と購入に対する規制強化」と「キサース刑の明文化」を求めていますが、反応はイマイチのようです。

かつてイランで、求婚を断られた男性が腹いせに相手女性の顔に硫酸をかけ、大火傷を負わせ両目を失明させるという事件が発生しました。この時の裁判ではキサース刑が言い渡され、「加害者男性の両目を酸で失明させる」ということになったのですが。。。

西側諸国から「非人道的だ」として非難の声が殺到したのです。その後、この事件の被害女性はキサース刑を取り下げ、加害男性を許したという美談が世界中を駆け巡りました。

 

しかしながら、同様の事件が減ることはありません。もしこのときキサース刑が執行されていたら、多くのイラン人女性が酸攻撃に遭わずに済んだことでしょう。「やられたらやり返す」という考えはあまり褒められたものではありませんが、アシッド・アタックが著しく増加している現状を考えるとやむを得ない手段の一つなのかもしれません。

そんなイランでは、複数の武装組織による銃撃や自爆攻撃などが発生しています。渡航の際には十分注意しましょう。

 

 

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