「タイで飲食店起業はそんなに甘くない」というお話



「微笑みの国」タイランドは親日国だし暖かい気候 & 美味しい食べ物があるので、日本人にとっては暮らしやすい国の一つです。

政情不安が10年以上も続いているにも関わらず、年々日系企業は増えており、日本人にとってはタイでの就職先はいくらでもあるはずなのです。

 

また、極端な意見を敢えて言えば、ふらりと立ち寄って、英語もタイ語もできないまま暮らし始めることだってできる国、それがタイの魅力でもあるわけです。

事実、タイで就職したいわゆる現地採用者の日本人たちは、「海外で頑張るんだ」という強いバイタリティーを持ち合わせている人が多く、少しの間雇われで働き、タイの社会を勉強し、「いつかは独立してやろう」と野望を抱いている人たちも少なからずいるのです。
 
・・・けれども、タイで起業するのはそんなに甘いものではないよ、というお話を今回はお届けしたいと思います。

 

 

バックパッカーあがりで起業を目論んだ30代日本人男性Aさんの話

タイに夢見て移住してきたかつてのバックパッカー旅人Aさんは、日本では旅行会社に勤めていたのですが、タイに来て初めて飲食店に就職しました。

この時働いていたのがバンコク市内にある高級和食店で、タイ人が決して安くない金額を惜しみなく払っていくのを目の当たりにしていました。

 

 

そう確信したAさんは、日本にいる友人に相談したのち、その友人実家の有名飲食店のフランチャイズ化を決めたのです。

ところが…

 

会社に辞表を出してこれから起業するぞって時に、友人の父親から「家業の味は門外不出だ」と言われ断られてしまったのです。

なんと、フランチャイズ化の話はAさんと友人の口約束レベルの話に過ぎなかったのです。ビジネスの初歩も知らないとはこのことです。

 

ここで、飲食関連で開業することに固執していたAさんは、急遽バンコクにある料理教室に通い、文字通りゼロからのスタートを目論んだのです。

しかし、これは無謀な試みで、この後の困難の始まりでもあったのです。

 

 

 

タイでは、「怪しげな商売」が成り立つ時代は終わっている

現在「和食ブーム」の真っ只中にあると言われているタイでは、同時に「日本旅行ブーム」でもあります。札幌の雪まつりから火がつき、2013年7月から短期滞在はビザ免除となったことで今に至っているのです。

こういったことも背景にあり、バンコクでは “日本人が好む本物の味つけの和食店” であっても、タイ人で賑わうようになってきました。

 

以前のように、タイ人向けの味にアレンジされた “なんちゃって日本食” の時代は終わり、本物の味が要求されるようになってきているのです。そんな業界に、料理を舐めているビギナーが参入しようとしているのです。

まさに無謀とはこのことでしょう。

 

さらに、タイでは経済発展に伴い、法の整備も着々と進んできています。当然、営業許可証や労働許可証がないと摘発を受けるようになりました。

労働許可証を得るには外国人ひとりに対し資本金200万バーツ(約600万円)以上が必要です。そして、「タイ人従業員4人以上の雇用」という条件を満たした上で起業しなければならないのです。

 

また、タイでは、一般的な会社は外国人の株保有は半数未満までしか認められておらず、タイ人のパートナーがいなければ難しいのです。下手をすると、そのタイ人のパートナーに会社やカネを騙し取られるケースだってあります。

つまり、現代社会のタイにおいて、一個人が起業するということは、以前ほど簡単なことではないのです。

 

怪しげな商売でも成立していたかつてのタイは今ありません。東南アジアらしい緩さは消えつつあるのです。

 

 

最終的に日本料理の総菜製造・販売を始めることにしたAさんですが…

郊外のショッピングセンターでブースを間借りし、そこで販売を行うことにしたAさん。ところが、意外なことに、タイでは日本でいうところの食品衛生法などがかなり厳しかったのです。

こうした法令のことなどをちゃんと調べもせず、早々に物件を契約してしまったAさんですが、残念ながら食品工場の認可が下りず。。。

 


そもそもAさんはスタート時点から過ちをいくつも積み重ねていたのです。会社設立のための資本金200万バーツを用意できなかったこともその一つ。

そのため、Aさんはまずはタイ人の会社として立ち上げ、時機をみてAさん名義の法人に切り替えるという、法の抜け道を利用することにしたのです。

(一応はこれでビザと労働許可証をどうにか取得)

 

無許可営業からスタートさせたAさんですが、万が一食中毒を出してしまったら…ごめんなさいで済む話ではありません。

現在のタイを舐めてもらっては困ります。本物の味を知り、先進国の衛生観念や経営手法を理解しているタイ人が増えてきており、いい加減な店はすぐに潰れてしまうのです。

 

Aさんのお店は本当に大丈夫なのでしょうか?

 

 

その後Aさんのお店は…

FacebookやLINEなどのSNS普及率は日本以上とも言われるタイでは、悪い噂はあっという間に広まってしまいます。

Aさんがもし問題を引き起こしてしまった場合、それはもうAさんだけの問題では済まなくなってしまいます。日本人起業家たち皆に不利益をもたらしてしまうかもしれないのです。

 

食中毒などの問題は起こさなかったものの、Aさんのお店は素人料理だったため、タイ人にさえ受け入れてもらえず、開店後わずか2か月ほどで撤退せざるを得なくなりました。

現地の法や食文化のことをよく知りもしないで始めたお店は、やはりうまくいくわけもなく…


すべてが甘すぎ、場当たり的なAさんですが、唯一の救いはバカが付くほど能天気で前向きなところでしょうか。

しかしながら、タイにおけるビジネスは、もはやそこまで甘い考えで成功するものではなくなってきています。さあ、どうするAさん?

 

 

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