ヒンドゥー教徒の聖地「バラナシ」の基本情報



ヒンドゥー教徒なら一生に一度は訪れることを願う聖地バラナシ。ガンジス川中流に位置するこの町のガート(川岸につくられた階段)で沐浴する人々の姿は、インドの典型的なイメージの一つでしょう。

 

聖なる川を黒く醜く染め続ける「死の灰」 ヒンドゥー教徒の聖地バラナシ

 

毎日数百人もの人々がこの神聖な場所で火葬され、肉体から解き放たれた魂が涅槃に辿り着き生まれ変わると信じられています。

 

「哲学」「人生」「生死」などをテーマにインドを旅行をするのであれば、必ず訪れるべき場所、それがここバラナシなのです。

 

バラナシには、巡礼者や観光客のみならず、毎日数多くの遺体が運ばれてきます。ヒンドゥー教徒にとって、遺灰をガンジスに流すことは輪廻の苦しみから解き放たれること。何日もかけて遠く離れた土地から運ばれてくる遺体もあれば、この町で静かに自らの死を待つ者も少なくありません。

ガンジス沿いにある2つの火葬場ではひっきりなしに遺体が燃やされ続けています。ただ、遺体は燃えて跡形もなく消え去るわけではありません。大量の遺灰や木灰はそのままガンジスに流されます。死の灰は、聖なる川を黒く醜く染め続けるのです。

 
 
 

天と地の交わる場所

ガンジス川にまつわるこんなヒンドゥー神話があります。

ある日、ビシュヌ神は機嫌よく天界を歩いていました。しかし、誤って足先を壁に当て穴を開けてしまったのです。その穴から流れ出た水が川となり、天界を流れるガンジスが誕生したというのです。

 

その頃地上では、バーギラタ王が “カピラ仙人の怒りに触れて焼き殺された6万人の先祖たちの霊” を天に導こうと、千年もの間、苦行し祈り続けていました。王の願いを聞き入れたビシュヌ神は、ガンジス川を地上に降ろし、6万の死者をその水で清め、昇天させることにしたそうです。

しかし、天界に流れるガンジスの水がいっぺんに地上に流れ落ちると、その勢いで地界が破壊されてしまいます。そこで、シバ神が自身の髪を使い、千年の歳月をかけながらゆっくりとガンジスの水を地上へと導いたとか。。。

 

このヒンドゥー神話から、ガンジス川は「天界と地上の交わる場所」と信じられているのです。死者は、ガンジスによって地上で犯した罪を清め、天へと昇っていくことができるのです。

 

 

ガンジス川の沐浴風景

ガンジス川はヒマラヤに源流を持つ大河で、数多くの支流と広大な流域面積を持ち、全長2,500kmもあります。前述の神話を信じるならば、もとは天界を流れていた聖なる川が、人々の祈りによって地上を流れるようになり、地上を壊さぬようにシヴァ神が受け止めてくれているとされています。

シヴァ神の頭から水が流れ出る様子が描かれているのはこのためで、ガンジス川自体もガンガーという女神と見なされています。

繰り返しになりますが、バラナシの街は聖地とされ、車の入れない細い路地を抜けていくと広大なガンジス川が目の前に広がっています。

 

静かで神々しく神秘的な光景と、ガート (階段) を降りて沐浴する人々の姿、そして河原にある火葬場。ヒンドゥー教徒の生と死は、ここガンジス川に集約していると言っても過言ではありません。

ガンジス川の水は、全ての罪を洗い流してくれると信じられているため、ヒンドゥー教徒にとってガンジスで沐浴することは一生の夢です。男性はふんどし一丁のような姿で、女性はサリーを着たまま行うのが普通です。

 

 

火葬場の風景をただ静かに見つめましょう

遺体を燃やして灰にし、ガンジス川に流すことはヒンドゥー教徒にとって最大の願いです。ガンジス川の水は全てのものを浄化し、この世の苦しみを解き放ち、解脱 (げだつ) させてくれると考えられています。

そのため河原には火葬場があり、河原に薪を積んで遺体を燃やします。当然のことながら、

 

写真撮影は禁止です!

 

ここでしか感じられない雰囲気を体感してみてください。インドの人々の、何ら隠すことのないありのままの営みを、ただ静かに見つめましょう。

 

 

ガンジス川の一日

早朝から夜遅くまで、バラナシのガンジス川には多くの人が集まり、昔から変わらぬ一日が繰り返されています。太陽が姿を現すとお祈りが始まり、人々はガートから川に入って沐浴します。

お祈りしながら水を浴びる人、口をゆすぐ人、ゴシゴシと体を洗い流す人、浮き輪を使って水遊びをする子供たち…

 

ガンジス川の水はけっして腐らないとされており、遠くから来た人はお土産に汲んで持ち帰ります。ですが、宗教的には素晴らしいものでも異教徒である私たちにとって、ガンジスの水はけっしてきれいではありません。間違っても口に含んだりしないようにしましょう。

 

対岸を眺めれば、

砂地が広がり、朝もやや夕焼けの中で見るとまるで別世界のように思えます。手漕ぎ船に乗って異世界に向かうような、美しくも儚げな印象を受けます。

 

日が沈むと、バラモン(司祭階級)によるアールティー(ヒンドゥー教の礼拝)が行われます。お香が焚かれ、燭台に火が灯され、伝統的なインドの楽器が音楽を奏で始めると、幻想的な光景が闇夜に浮かび上がります。

 

 

皆さんはガンジス川で沐浴しないでくださいね!

「どうしても沐浴を体験してみたい!」という方もいるのでしょうが、私はおすすめいたしません!

 

  • 水位が高ければ危険です!
  • 川の流れもあります!
  • 深さが読めません!
  • 透明度がないため沈んだら助けようがありません!
  • 誤って水を飲んだら免疫のない人は最悪死にます!

 

 

ガンジス川でインドの神秘を体感しよう!

何と言ってもガンジス川の魅力はインド人の死生観を生で知ることができることです。生と死がこれほど近い場所は、世界を見渡しても他にないでしょう。

 

全てが昔のまま。

ありのまま。

 

インドに行くと人生観が変わるとも言われています。深い体験をすれば、それは大きな驚きと衝撃を与え、価値観が揺らぐことは間違いないでしょう。

是非あなた自身の目で、インドの神秘を体感してみてくださいね!

 

 

ベストシーズン & イベント情報

バラナシのベストシーズンは10〜3月です。間違っても4〜6月の酷暑期には行かないようにしてくださいね。7〜9月はモンスーンの影響で大雨が降りやすいのでこの時期も気をつけましょう。

 

「ホーリー祭」

通常2月末から3月後半までの間に行われるヒンドゥー教の春の訪れを祝う祭典です。見知らぬ人同士でも色粉を塗りあい、色水を掛け合ったりして祝うお祭りです。悪鬼を追い払うために…
 
「ダシャラー」

毎年9・10月に開催されます。インドの祭りの中でも一番人気のあるお祭りの一つといえるでしょう。ドゥルガーという女神を祀ったお祭りで、ドゥルガー女神が水牛に化けた悪神マヒーシャスラを倒した日、つまり神が悪を滅ぼし喜びに満ちる神聖な日を祝います。
 
「マハー・シヴァ・ラートリ」

毎年2・3月頃に開催される、ヒンドゥー教の神様であるシヴァ神を祭る最も神聖な日で最も重要なお祭りの一つです。ちなみに「シヴァラートリー」とは「縁起の良い夜」という意味で、街中のシヴァ神を祀る寺院が美しく飾られ、たくさんの人々が礼拝に訪れ、夜通しで神を讃えています。この日の夜にはインドの有名な音楽家も登場する古典音楽会が開催され、街は大盛り上がりです。
 
「ディープ・ディパワリー祭り」

毎年10月・11月頃に開催される、ガンジス河が一年で一番美しく光で包まれる「光の祭典」です。ちなみに「ディープ・ディパワリー」とは灯火・灯明の列という意味です。灯明がぎっしりと飾られ、光のロマンティックな光景が広がります。ボートに乗って川から眺めるのもおすすめです。