タイの高齢化・未婚化にみる理想の人生とは



微笑みの国タイでは、政府の後押しを得ながら地域活性化の手段の一つとして OTOP(One Tambon One Product) と呼ばれる一村一品活動で行われています。

そんなタイでは近年、活動主体であるメンバーの高齢化に伴って「高齢者への雇用機会の提供」という意味を色濃く帯びるようになってきています。そう、実は日本のみならずタイでも高齢化が進行しているのです。

 
ASEAN (東南アジア諸国連合) 主要国と比較してみると、タイは高齢化に置いて一歩先を行っているのです。国連の定義によると、65歳以上の人口が総人口の7%を超えると「高齢化社会」と言われていますが、タイは200o年には既にその値を超えています。

そして、2014年には「高齢社会」(14%) を超えており、高齢化率が7%から14%へ要した期間 (倍化年数) があまりにも速いペースで進んでいるのです。

 

 

 日本は2010年に23%、2020年に29%、そして2035年には33%超になると予想されています

国連は、2050年には世界人口の18%が65歳以上になると予想

 

一方でタイは少子化も進んでいます。先進国と同様に、少子高齢化と向き合わなければならない状況下にあるのです。ある意味、先進国よりも状況は深刻とも言えるでしょう。

なぜなら、他の先進国と比べて「経済発展の早い段階で高齢化が始まっている」からです。「富む前に老いる」状況になってしまっているのです。

 

 

日本のような年金制度のないタイ

高齢者向けの年金といった「社会保障」政策や「子育て支援」策といった一種の分配政策が他のASEAN主要国よりも必要とされているタイですが、その財源は不十分。

そのため、研究開発の推進や積極的な設備投資、高度人材の育成のための高等教育制度の拡充、より付加価値の高い部門への人材の移行など、生産性の向上が他のASEAN主要国よりも強く求められています。

 
日本のような年金制度のないタイでは、高齢者といえども生活の糧を自ら得る必要があります。「マットミー」と呼ばれる絹の織物、花飾りなど伝統的な工芸製品を高齢者が手作りし、共同で販売し利益を得ている地域もあります。

また、過疎化の進む農村で農家の空部屋を活用して農業体験型のバックパッカー向けのエコツーリズムの世界的な流れに対応しているところも日本に先んじています。

加えて、こうした取り組みに国のみならず大学、地方の研究所などの高等教育研究機関が積極的に関与して支えている点にも注目すべきでしょう。

 

 

タイの抱えている経済問題と少子高齢化問題はなかなか深刻なものがあります。しかも、所得再分配が有効に機能しないとすれば、今後起こり得る格差拡大への対処も困難となるでしょう。

経済格差の拡大は、国民の不満を高め、社会不安を誘発する恐れもあります。さらに、新国王が即位し、国王の果たす役割やあり方も今までとは異なってくる可能性もあります。

課題が山積みである中、タイ政府は目先の選挙のことだけでなく、中長期的視野に立った政策運営を行なっていくべきときなのです。
 

 

 

高学歴女性ほど結婚しないタイ

シンガポールでは、政府がお見合いパーティを主催しなければならないほどに少子化問題が深刻化してきていますが、ASEAN第2位の経済大国タイにも、少子高齢化問題が重くのしかかってきています。

タイと言えば、日本と二人三脚で発展してきた…と言ってもいいほど日本企業の進出が著しい国の一つです。たとえタイで大規模なデモが発生し放火されるような事件があったとしても、日系企業が入っているビルは安全…とも言われています。

 
しかしながら、そんなタイにも少子高齢化の波は押し寄せてきており、いまや日系企業がタイに進出する際の問題は「賃金」や「カントリーリスクの上昇」ではなく、実は「人手不足」(高度人材含む)にあるのです。

合計特殊出生率 (1人の女性が出産可能とされる15〜49歳までに産む子供の数の平均) は1.39と日本よりも低く、首都バンコクに限っては0.8とも言われています。

 

 
ASEAN域内では、(イスラム国家ゆえに人口増が見込まれるインドネシアやマレーシアを除けば) タイはシンガポールに次いでいち早く「超少子高齢化社会」に突入してしまう国なのです。

女性の「高学歴化」「社会進出拡大」「晩婚化」「未婚化」も背景にあるようです。
 

 

 

活況の高齢者向けビジネス

現在タイでは、高齢者向けの住宅と介護施設の開発事業に注目が集まってきています。今後数年以内に高齢者市場が開花することでしょう。高齢化社会に入ったことで、需要が急拡大してきているのです。

タイには、国内のみならず世界各国の高齢者を取り込む潜在力があります。こうした国外の高齢者を呼び込もうとする動きは既にシンガポールやインドネシア、フィジーなどでも見られます。

 
そんな中、東南アジア諸国の中でもタイは有利な立場に位置づけられています。なぜなら、経済成長に伴って生活環境基盤が着々と整備されているほか、先進諸国や東南アジア諸国に比べて「生活費が安い」からです。

また、暖かい気候で観光スポットが多いことなども魅力の一つ。さらに、日本や韓国、欧米諸国などに対して年金受給者を対象に長期滞在ビザ(査証)の取得を可能としていることも「国外からの高齢者受け入れ」に有利とみられています。

 

 
タイで不動産を購入する外国人は多く (国・地域別では、中国・香港・シンガポール・台湾・イギリスの順で上位)、マンション建設と同様に高齢者向けの住宅や介護施設でも国外企業と国内の不動産会社との間で合弁会社の設立が進むと予想されています。
 

 

 

自信とやりがいを持って生きる人生

高齢者が自分の仕事に自信とやりがいを持って生きていける人生はとっても素敵です!冒頭で述べたOTOPは、単に仕事を提供するだけでなく「レクリエーションを楽しんだり」「社会貢献したり」「相互ケアで健康を増進する」仕組みとしても機能しています。

年金制度のないタイにおいて、OTOPの経済的な側面の重要性は言うまでもありませんが、それ以上に「生き甲斐を持って健康に人生を全うする」ためのヒントがそこにはあるのです。

 

タイ日本
年金制度なし国民年金、厚生年金など
平均寿命男性71歳、女性79歳男性81歳、女性87歳
地域活性化OTOP(内務省)
中小企業振興(工業省)
地域おこし協力隊(総務省)
道の駅(国土交通省)
中心市街地活性化(経済産業省、国土交通省)
観光推進エコツーリズム(農家への宿泊と農業体験)、バックパッカーツーリズムへの対応空き家対策も兼ねた移住定住の促進、民泊の可能性の検討中。

 

 

 

高齢化によって労働人口が減少し、年金制度の破たんまでもが懸念されている現代の日本では、もはや『悠々自適な老後』という理想は諦めなければならないのかもしれません。

その反面、 高齢者であっても「長く働き続けること」「社会貢献を果たすこと」「生き甲斐を持つこと」がより一層大事になってくるのではないでしょうか。

タイも日本も、これからの高齢社会の在り方には新たな視点をもって取り組むべきなのです。