「ベトナムの銀行は預金金利が高い」うえ、(少し前までは) 旅行者でも簡単に口座を開設することが可能」でした (近年、ベトナム政府による規制が少しずつ厳しくなってきています)。とはいえ、ほぼ全ての銀行でネットバンキングの利用が可能となっており、ATMカードとオンライン取引を申し込みさえすれば (短期滞在も含めた) ベトナム生活がより快適になることは間違いなし!
信用度から考えると、HSBC (イギリスに本社を置く世界最大級のメガバンク) などの大手銀行が良いかもしれません。ちなみにベトナムのローカル銀行は日本でいうところの信用金庫程度の規模しかありませんので、銀行が突然倒産…ということも十分に考えられます。そこでここでは、旅行者でも安心して開設できるベトナムの銀行についてまとめてみました。
銀行 in ベトナムの現状
ベトナムでは、ドイモイ政策 (1986年) の後4つの大手国営銀行が設立され、その後1990年代から民間銀行や合弁銀行、外資系銀行などが次々と設立されました。そんな中、圧倒的なシェアを誇るのはやはり4つの国営銀行です。うち、Vietcom Bank(外商銀行)、Vietin Bank(工商銀行)、BIDV(投資開発銀行)の3行は「世界の銀行ブランド力調査」において見事ランクイン!世界的にも評価されています。
一方、民間の銀行は金利も含めたサービスの差別化で収益を伸ばしていますが、不良債権の処理が終わっていない銀行も多く(これは国営銀行も同じ)、一部の銀行は国有化されたり合併を促されるなど、再編の渦中にあります。また、外資系銀行は主に母国から進出してきた企業や個人向けのサービスが主ですが、CitiBankやHSBC 、Shinhan Bank (親韓銀行)などは現地の富裕層や中間層を狙って金融サービスを提供したりと、ベトナムの金融サービスに新しい風を吹き込んでいます。
「よしっ、それならば、金利の高いベトナムの銀行に口座を開設して、年に一度のベトナム旅行費を金利で補おう」などと考える方もいらっしゃることでしょう。ところが2019年秋、(外国人に優しい) Timo銀行が以下のように規約を変更しました。「外国人で口座開設できるのは12ヶ月以上の滞在許可がある場合のみ」「定期預金を組めるのは6ヶ月以上の滞在許可がある場合のみ」。
これまでは短期滞在者でも口座を開いて定期預金の利子を受け取ることができたのですが、この法改正によって「12か月以上の長期滞在ビザが必要」ということになりました。さらには、長期就労ビザ保有者であっても、ネットバンクでの優遇金利が適用されなくなるようです。結果的に外国人は、ベトナム人より1%ほど低い金利が適用されます。ベトナム政府は、「外国人による定期預金のお金を必要としない」「お金を株にシフトし株価を高くする」と宣言したのです。つまり、定期預金がダメになった外国人は、証券取引をすることになっていくでしょう。とはいえ、「ベトナムドンの価値を維持するため」「外貨投資を呼び込むため」にも、すぐに金利が急降下することはなさそうです。まだまだもうしばらくは「ベトナムの銀行にお金を預けるうまみ」は残るでしょう。
1年定期預金の金利比較
以下、2019年度のベトナムドン建て定期預金金利 (5%以上の銀行) を掲載しています。
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信用度の高い銀行の順列は?
一般的に、信用度の高い金融機関は低い金利でも預金を集めることができ、劣る金融機関は高い金利を提示しないと預金が集まらないと言えるでしょう。その観点から見てみると、信用度は「世界的な大手銀行 > ベトナム政府 > 新興国の外資系銀行 > ベトナム国営大手銀行 > ベトナム民間大手銀行 > ベトナム中堅/小規模銀行」の順になります。
本来、その国の中で一番信用力があるのは政府(ベトナム政府)のはずですが、グローバルに活動している大手金融機関はベトナム政府よりも低い金利でベトナムドンを調達できているため、「ベトナム政府よりも信用力がある」のです。一方で、(外資や大手に比べて) 信用力の劣るローカル銀行は、金利を高めに設定して預金を集め、既存の預金者を繋ぎとめている状態と言えるでしょう。
ベトナムで金利が高い理由
ベトナムでは、マイナス (あるいはゼロ) 金利の日本からすれば信じられないくらいの高金利なのですが、いったいどうしてこんなにも高い金利をつけることができるのでしょうか?
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旅行者も口座開設できますが…(注意点)
実際、就労ビザのないベトナム非居住者 (観光客)であっても口座を開設することはできますが、以下の点を考慮する必要があります。
◉ 外資系銀行は安心感があり英語が通じるが、金利は低い (外資系以外は英語が話せない銀行窓口担当者が多い)
◉ 倒産リスクがある (預金保護の上限が低い)
◉ 現金で預け入れできない場合があり、この場合日本からの国際送金手数料がかかる
◉ 日本円とベトナムドンの両替手数料が都合2回かかる
◉ トラブル時、英語で連絡&対応してもらえるか不明 (自力解決力が必要)
◉ 満期の預金は本当に外貨へ再両替してベトナム国外へ送金できるのか、きちんと確認しておくことが必要 (ハンドキャリーの場合、中央銀行の許可証が無いと1回5000ドルまでしか持ち出せない)
などの理由から、高金利目当てでベトナムの銀行に預金する必要があるのかどうかは各個人の判断次第です。加えて、手数料 (「モバイルバンキング口座維持費16500VND/月」「キャッシュカード発行費55000VND」「キャッシュカード年会費50000VND」「他行ATM利用料3300VND/回」などがかかることを開設時に確認しておきましょう。
Techcom bank (国営)で口座開設
Techcom BankはVietnam Technological and Commercial Joint-stock Bankの略称で、ベトナム技術商業銀行です。ベトナムには大小合わせて16行の商業銀行がありますが、TCHCOMはベトナムの中で “最
【 口座開設に必要なもの 】
- パスポート
- ビザ (観光でも可)
- 現地で使える携帯電話 (SMSメールを受信する必要あり)
Bidv(国営) で口座開設
BIDV(Bank for Investment and Development of Vietnam: ベトナム投資開発銀行)はベトナムの4大国営商業銀行の一角です。
【 口座開設に必要なもの 】
- パスポート
- ビザ (観光でも可)
※ ただし、支店・担当者によってはワークパーミットやレジデンスカードを要求される場合があります。年々厳しくなっています。BIDVは国営系なのでルールが厳しいようです。SCBやTIMOなら日本と同様に預金できるのですが……
まとめ
日本人からすると、ベトナムの預金金利は本当に魅力的に感じるかもしれません。なんといっても日本では、(資産形成の意味で) 銀行に預金するメリットはゼロなのですから。。。一方で、加熱するベトナムの預金金利の上昇。これをチャンスとみるかリスクとみるかはあなた次第です。ただ、ベトナム国家銀行 (中央銀行)はこの預金金利の上限を厳守するよう各銀行に対して指示文書を出しています。事実、12ヶ月以上の滞在許可がなければ外国人の口座開設が認められなくなりましたし、「観光ビザ」(3ヶ月)での口座開設は不可能となってしまいました (可能な銀行もあるかもしれません)。これまでのように「1ヶ月ビザで口座を開設し、1年定期を組む」ことはできなくなりました。
近未来を推測すると、(金利は) 下がることはあっても上がることはない。ある意味妥当なラインとも言えますが、「儲けたい」という思いの方からすればちょっぴり残念な傾向にあるのかもしれません。そして、「申し訳ありませんが、私たちの銀行ではこのお金が合法的なものであるという証明がなされない限りは、お預かりすることができません」と断られてしまうことも。。。
日本にいながらベトナムの銀行口座を開こうと考える人もいるかもしれません。しかしながらベトナムを代表する大手銀行は日本に支店を持っていませんし、ベトナム展開を行うHSBCも日本における個人金融サービスを終了しています。現地に行かずオンラインのみで口座開設を完結させることはできないでしょう。結論として、長期的展望で金利が下がるだろうことを考えると、永住者や長期滞在者 (就労 or 留学) 以外は、金利目的でベトナムに銀行口座を作るうまみは薄れてくるのかもしれません。
それでもどうしても「開設したい」方は、比較的ハードルの低い「SCB」(銀行)の窓口で尋ねてみてはいかがでしょうか。ちなみに、日本人にとっておすすめの「利用しやすい」「規模が大きい」銀行は、「VietCom Bank」「Vietn Bank」「BIBD」「Timo」です (「Timo」はネット銀行。アプリやWebサイトは日本語に対応していませんが英語に対応しており、日本人利用者も増えてきています)。