イエメンはアラビア半島の南端に位置する「アラブ文明発祥の地」 (アラビアンナイトの国) で、中世そのままの古い町並みが今もそのまま残っています。特に首都のサナアは「世界で最も古い街」として、「ノアの箱船」のノアの息子が拓いた…という伝説があるほどです。そんな立地条件もあってイエメンは古代から交易の地として栄えてきましたが、同時に様々な国から支配を受けてきたのです。
そんなイエメン観光の魅力は、歴史的建造物ばかりではありません。伝統に基づいた人々の暮らしぶり一つとってもすごく魅力的なんです。
基本情報
《続きを読む》皆さんは、イエメン (YEMEN) 観光に興味はおありでしょうか。正確にはイエメン共和国といい、人口は約2700万人ほど。しかしながらその面積は日本のおよそ1.5倍ほどもあります。とても広々とした国なんです。そんなイエメンは、(治安の悪さとは裏腹に) 観光に適したスポットがたくさんあるため、いつの日か一度は訪れてみる価値があると言えるでしょう。
そんなイエメンを訪問する際に必要なビザは2種類。「観光用ビザ」と「商用ビザ」です。どちらも有効期限や滞在可能日数に変わりはありません。ただし、パスポートにイスラエルの入国記録があるとイエメンには入国できないので注意しましょう。
◉ 首都:サナア (サヌア)
◉ 最大都市:サナア
◉ 言語:アラビア語
(アデンなどの都市では比較的英語が通じます)
イエメンは1990年に共和国として成立しましたが、政情は不安定。人口の8割 (2100万人) が人道支援を必要としており、1300万人もの人々が飢餓の危機に瀕していると言われています。首都サナアの旧市街は世界遺産に登録されているのですが、隣国サウジアラビアの空爆などで深刻なダメージを受けており、「危機遺産リスト」に追加されています。
現在、日本の外務省はイエメン全土に「レベル4:退避勧告」を出しています。つまり、ビジネスのみならず観光でもこの国を訪れることは難しくなっています。平穏になって、気軽に観光できる日が来ることを願うばかりです。
◉ 通貨:イエメン・リアル (YER)
◉ アクセス:日本からドバイまたはドーハを経由して飛行機でだいたい16時間くらい
◉ ベストシーズン
サナアであれば、基本的には一年中過ごしやすい気候なのですが、ソコトラ島への観光であれば10〜4月 (11〜3月がベスト) が良いでしょう。5〜9月はモンスーンによる強風で船便がストップし空の便も飛ぶかどうかわかりません。40度を超える日もあるほどの真夏日なので、いずれにしてもおすすめできません。
★ サナア旧市街
《続きを読む》「アラブ文明発祥の地」であり古い歴史を持つイエメン。石油に恵まれなかったので、オイルマネーで湧く近隣アラブ諸国のように高層ビルが建ち並ぶことはなく、近代化は遅れ、中世そのままの国になったと言われています。街を歩けばカートという葉っぱを噛みながら歩く男たち。そのほとんどが民族衣装を着てジャンビーヤという短刀を腰に挿しています。
そんなイエメンの首都サナア(標高約2300m) の旧市街は、街が丸ごと世界遺産に登録されています。緑が少なく酸素が薄いこともあってか、到着直後は歩いただけで息切れするかもしれません。とはいえ、ここには粘土で作られたレンガ造りの建物などアラブの文化が色濃く残っており、とっても魅力的!この街並みは13世紀の頃からほとんど変わっていないそうです。
古代ギリシャや古代ローマの時代には「幸福のアラビア」と呼ばれ、現在は「煉瓦の摩天楼」と呼ばれるとても美しい街です。高さ12mの城壁に囲まれ、多くのモスク、公共浴場、古い家屋が連なっており、「アラビアンナイト」を彷彿とさせます。まさに、一生に一度は見ておきたい光景です。
派手さはありませんが、夜のライトアップも温かみがあってとっても素敵です。人々の生活や風俗も、地域の特徴を色濃く表しています。女性は黒いチャドルで目以外すべてを布で覆っています。その風情は中世のアラブの雰囲気をそのまま残しており、世界遺産を「過去」でなく「現在」のものとして感じさせてくれます。
☆ ロック・パレス
《続きを読む》サナアの北西にあるワディ・ダハールという町に、岩で造られた宮殿「ロック・パレス」があります。ザイード朝のイマームヤヒヤが夏の離宮として作らせました。古い建物が多いイエメンの中では比較的新しい部類に入る1930年代の観光地です。
建物自体は5階建てで、内部を公開しているので見学することができます。ちなみに標高2400mのワディ・ダハールは岩山に囲まれた自然いっぱいののどかな町なので、ロック・パレスから見渡す雄大な景色はオススメです。サナアから25kmと日帰り可能な場所なのですが、サナアから出る場合は近場でもパーミッションが必要な場合があるので現地で確認して下さいね。
★ ソコトラ島
《続きを読む》ソコトラ島はインド洋に浮かぶイエメンの世界遺産です。「インド洋のガラパゴス」とも呼ばれるほどに独自の進化を遂げた動植物の宝庫として知られています。固有種も多く、島のシンボルである傘の形をした竜血樹や見た目がかわいいボトル・ツリーなど、珍しい植物が自生しています。もちろん、鳥や昆虫などの動物にも固有種がたくさんいます。
ここには息を呑む絶景 & 自然があります。固有の植物が300種、爬虫類が24種、鳥類が8種とここでしか見られないものだらけです。1999年に空港ができるまでは外国人の立ち入りが禁止されていました。地球温暖化などで絶滅危機種も増えてきていますので、ネイチャー好きな方は是非早めに訪れてみてください。
☆ シバームの旧城壁都市
《続きを読む》シバームはイエメンのハドラマウト地方の都市で、1982年に世界遺産に登録されています。2015年には内戦で破壊される恐れがあるとして「危機遺産リスト」に追加されています。上写真のような、その独特の高層建築物が特徴的です。500年以上も前に泥で作られたにも関わらず、建物間には連絡橋があるなど、現代のビルに引けを取りません。
窓などの装飾は繊細で美しく、「砂漠の摩天楼」「砂漠のマンハッタン」「最古の高層ビル群」などと称されています。あなたは、砂漠にこつ然と現れる摩天楼、砂漠のマンハッタンと聞いてどんな場所を想像しますか?
実はシバームは3世紀頃から交易都市として栄えており、豊かな街が「遊牧民に襲われないように」「洪水に押し流されないように」、城塞内の家屋が上へ上へと建て増しされていったのです (今見られる姿は16世紀に作られたもの)。まさに「世界最古の高層ビル群」なのです。
泥レンガ作りの建物の上部が白い漆喰で塗られているのは「建物の強度を増すため」「強い日差しから守るため」だそうです。東西500m、南北400mという狭い城塞内にびっしりと建ち並ぶ高層ビルを見るために、対岸の岩山に登って見てみましょう。びっしり感がわかって面白いですよ。
★ 「絶壁の集落」シャハラ
《続きを読む》イエメンでは昔から部族間抗争が絶えず、敵から身を守る目的で競って山の上に集落が作られたそうです。シャハラもその一つで、今なお3000人ほどの人たちが暮らしています。海抜2600mにあるシャハラは二つの山頂にまたがっており、間には17世紀に作られた石橋がかけられています。
ちなみにイエメン政府は外国人個人でのシャハラ訪問を許可していませんので、どうしても行きたい方は旅行代理店での申し込みが必要です。サナアから160kmほど離れており、途中から険しい山道になるので4WDに乗って一日がかりになってしまいます。ですが、やっと辿り着いたそこはまさに天空都市!「生きたマチュピチュ」と呼ばれるのも納得です。
ショッピング
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🔴 サナア・トレード・センター
サナアのアルジェリア通りにあるサナア・トレード・センターは大きなショッピングセンターです。住居やオフィスを含む複合ビルで、ファッション・時計・ジュエリー・電気製品・日用品など70店舗ほどが入っています。品質は良く、香水や貴金属、アクセサリーなどを安心して買うことができます。お土産にオススメの生地や雑貨なども売られています。
🔵 スーク・アル・ミルフ
「スーク・アル・ミルフ」はサナアの旧市街にある有名なスーク (バザール) です。ちなみにミルフとは「塩」という意味で、紅海で作られた塩をサナアで売買していたのがスークの始まりだそうです。とても賑やかな場所で、入り組んだ路地にスパイスや日用雑貨などを売るお店が所狭しと並んでいます。サヌアのお土産を探すにはおすすめのショッピング・スポットと言えるでしょう。民芸品や工芸品など、掘り出し物が見つかるかもしれませんよ。
🔴 アデン・モール
イエメンのアデンは、首都サナアに次ぐイエメン第2の都市です。南北イエメン統合 (1990年) までは南イエメンの首都でした。ここにあるアデン・モール (ショッピングモール) は「イエメン最大のモール」とも言われています。イエメンではなかなかショッピングを楽しむことができないのですが、ここなら安心!ちなみにアデン・モールは海辺に建っていますので、ここからの景色も抜群です。
お土産
《続きを読む》イエメンに来たら買うべきお土産は「モカコーヒー」と「織物」ではないでしょうか。前者は現地で飲んでみて気に入ったら買ってみてください。後者の織物類は色のバリエーションが豊かなので、特に女性の方は気に入るのではないでしょうか。イエメン観光をきっかけに (モカコーヒー & 織物に) 興味を持ってみるといいでしょう。
心優しきイエメンの人々
《続きを読む》街の中心部を歩いていると、路上で食事をしている集団がいました。食べていたのは (石鍋で作る) イエメンの伝統料理サルタ。何気に興味ありげに横切ろうとしていたところ、向こうから話しかけてくれ、「よかったら一緒に食べていきなよ」と誘われました。
貴重な食事を (見ず知らずの日本人の) 私にも分けてくれる心優しきイエメン人。個人的な印象としては、中東の人たちはどこに行っても日本人を歓迎してくれます。中でもイエメン人の優しさは群を抜いている気がします。
一番印象に残っている国イエメン
《続きを読む》残念ながら現在は内戦のため気軽に旅行することはできませんが、筆者が今まで行った中で一番印象に残っている国の一つがイエメンです。いつの日かまた行きたいなーとも思っています。インド洋に浮かぶ世界遺産の島「ソコトラ島」で自然の神秘を感じたり、歴史的建造物を見ながらアラビックコーヒーを飲む。なんて素敵なひとときなのでしょうか。
ところで、(イエメン旅行において) 一つだけ面倒くさいことがあります。それは、(あなたの) パスポートにイエメンビザがあることで、イスラエルや他の中東の国に入国する際に、入国審査で必ずイエメン旅行のことを聞かれることです。下手したら、別室で質問タイムが始まります。というわけで、中東の国に行く際はそういった事情をちょっとだけ把握しておいてくださいね。