1日190円未満で暮らす「極度の貧困層」は世界人口のおよそ1割、7.6億人もいます。
しかし、中国やインドネシア、インドなどの状況が改善したこともあり、2002年の調査と比べるとその数は半減しています (2016年)。
それでも、世界経済の不振もあり、「2030年までに極度の貧困をなくす」という国際社会の目標は達成できそうもありません。
現在、「極度の貧困層」はアフリカのサハラ砂漠以南や南アジアに集中しており、うち半数は子供たちという現実。
皆さんはどう考えますか?
貧困…
飢え…
衣食住のない暮らし…
今回は、そんな状況下に苦しんでいる国、中東のイエメンについて考えてみたいと思います。
内戦状態が続いている中東のイエメンでは飢饉が深刻化しています。紛争による海上封鎖や港湾の破壊が進み、90%を輸入に頼る食料の供給が途絶えたためです。
国連によりますと、国民の過半数に当たる約1,400万人が食料不足に苦しんでおり、栄養失調の子供は約150万人。うち37万人はより深刻な状態です。
紛争を続けるのはハディ暫定政権と、イスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」。
中東の隣国サウジアラビアが政権を支援して軍事介入し、シーア派の大国イランがフーシ派を支えており、和平交渉は難航状態なのです。
サウジ軍などは、フーシ派への軍事支援を遮断するために海上封鎖を展開しています。さらに、フーシ派が支配する南西部ホディダを激しく空爆し、輸入食料の70%を陸揚げしていた港湾施設がほぼ全壊…
これにより、食料不足が本格化しているのです。
2016年はじめ、シリアは世界から見放されていた感がありました。しかし、国連安保理で「シリア内戦を終わらせる」ための決議が全会一致で採択されるなど、状況は改善に向かい始めているようにも思えます。
一方、シリア同様、もしくはそれ以上に人権侵害に遭っている国があります。中東最貧国のイエメンです。日本ではあまり報道されませんが、イエメンは悪化の一途をたどっているのです。
イエメン共和国は、第一次大戦後、オスマン・トルコ帝国から独立した北イエメンとイギリスの植民地だった南イエメンが1990年に統一され成立しました。
しかし、1994年、南側が再独立を求め、内戦が勃発したのです。それからは不安定な状況が続き、アルカイダの拠点になったこともあります。
その後、2011年の「アラブの春」をきっかけに反政府運動が高まり、大統領が辞任。副大統領だったハディ氏が暫定大統領に就任しますが、その間にイスラム教シーア派の武装組織「フーシ派」がイエメン北部のサアダを占領し、勢力を拡大していったのです。
2015年1月にはハディ暫定大統領が辞任して政権が崩壊。2月にはフーシ派が政権掌握を宣言…
したかと思いきや、
ハディが辞意を撤回!
こうして、現在も内戦が続いているわけなんです。
上述の通り、サウジアラビアやイランの参戦で、もうメチャクチャな状態となっているのです。
イエメンの人道危機は最も深刻な「レベル3」!これは、シリアや南スーダンと同じレベルです。
人口の8割にあたる2,100万人が人道支援を必要としているとされ、1,400万人ほどが飢餓の危機に瀕しているのです。
この最悪な状況を見過ごせないと判断したオランダは、国連人権理事会でイエメンへの調査団派遣を求める決議案を提出したのですが、
紛争当事国のサウジアラビアがこれを阻止し、オランダは決議案を取り下げてしまいました。
アメリカはどうかというと、
「中東問題にはあまり関与しない」方針とサウジアラビアとの関係性もあり、イエメン救出には消極的なようです。
現状は、連合軍が支援するハディ暫定大統領側が有利なようです。
ハディ暫定大統領・サウジアラビア・連合軍
vs
イスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」・イラン
連合軍の空爆もあり、現状はハディ政権側に勝利の予感もありますが、シリアやイラクの例を見てもわかる通り、空爆だけで解決するわけありません。
仮に武力でフーシ派を抑え込めたとしても、劣悪な生活レベル、少数派の人権、弱体な政府といった紛争の根本要因は残ったまま。
今はこうした国内の問題に周辺諸国やテロ組織、宗派対立などが加わり混とん状態にありますが、国内を安定させるためにはどうしても「政治的解決」が欠かせません。
イエメンは、アルカイダ系組織の拠点にもなっており、こうしたテロ組織の拡大を防ぐためにも、一刻も早く国内の安定化が求められるのです。
北イエメンと南イエメンを元通り2つに分け、2つの国として扱うことはできないものなのでしょうか?