海外で困窮する邦人の実情と「自己責任論」を考えてみる



「日本で貧乏生活をするくらいなら、物価の安い国に行ってそれなりの暮らしをした方がいい」

そう考えて海外移住 (もしくは長期滞在) する人は少なくないようですが、そんな理由で海外に行って、本当に幸せになれるのでしょうか?

その答えは、必ずしもYESではないようです。

 

貧乏は選択肢を狭める

「このまま日本に住んでいても、カツカツの生活しかしていけない」

「海外生活への憧れがある」

「日本社会の歪みに疲れきってしまった」

・・・

といったような理由から海外移住を決意する人もいるようですが、近年は、20〜30年前と比べて「海外生活のメリット」が薄れつつあります。新興国で貧乏生活をするくらいなら、日本国内の地方に住んだ方がまだマシな生活を送っていけるとも言えるでしょう。

それならなぜ、わざわざ海外で生活する人がいるのでしょう?それは、同じ予算であれば日本の地方よりも東南アジアの国々の方が物価が安くマシな生活ができると思い込んでしまっているから。。。

 

 

そう。貧乏はときに、人生の選択肢を狭めてしまっています。どんな仕事をするのか、どこに住むのか、誰と付き合うのか。。。

こうした選択の幅を大いに狭めてしまっているのです。

 

 

先進国で有数の貧乏国民になるつつある日本人

国民一人当たりの名目GDPを見てみると、日本人は先進国で最下位層の貧乏国民になりつつあることがよくわかります。今よりも円安が進めば、ヨーロッパでダメな国とも言われているイタリアやスペインよりも下回ってしまう可能性だってある状況なのです。

近年、中国人をはじめとする多くのアジア人たちが日本に買い物に来ていますが、彼らは日本の日用品が「安いから」それを買いに来ているのです。つまり、日本は安い国とみられているのです。

さらに、かつて日本人が世界中のブランド品を買いまくっていたように、今ではアジア人たちが日本の質屋さんでブランド品を買いまくっているのです。こうして、日本では猛烈な勢いで貧乏化が進んでいるのです。

 

 

一方で、モノの値段を考えてみましょう。例えば、日本のマクドナルドで350円くらいのものが、スイスでは1,000円だったりします。日本の大戸屋で800円くらいの定食が、ニューヨークでは3,000円だったりします (日本はデフレが進んでいる)。

海外では、不味いラーメンであっても平気で1,000円以上します。こうして、どんどん貧乏化していっている日本ですが、高齢化が進み、国の借金が1,000兆円を超えて、この先うまくやっていけるのでしょうか?

 

 

海外で経済的に厳しい状況に立たされている日本人

例えば、フィリピンやタイなどに行ってみると、「帰るお金がなくなってしまった」「とにかく貧乏な生活を送っているんです」といった「困窮邦人」のなんと多いことか!

中には途方に暮れて路上生活をしている人すら目にします。フィリピンでは、困窮邦人が大使館に援護を求めて駆け込むケースがかなり多いそうです。ある統計では、年間100人超の人たちが駆け込んでいるらしく…ダントツの1位。

(2位のタイでは30人ほど)

 

大半は中高年の男性で、女性絡みでフィリピンへ飛んだケースがほとんどだと言われています。日本の親族とは長年音信不通なため、送金を願い出ても拒否され、途方に暮れて路上生活する者もいるようです。

こういったケースでは、最終手段として「国援法」と呼ばれる法律を覚えておくとよいでしょう。これは国が帰国などにかかる諸費用を税金を使って貸してくれる制度のこと。

 

このように、「自身の意向でフィリピンに渡航し、今帰らないと日本への帰国費用がなくなる…」という状況まで追い込まれてしまうのは自業自得と言えるかもしれませんが、最後の最後は「国援法」にすがる手段も検討してみましょう。

 

 

「自己責任論」を考える

2018年、シリアで拘束され3年4カ月ぶりに解放されたジャーナリスト安田純平さんは「自己責任」を問われ大変なバッシングに遭ってしまいました。「報道」という大義名分があったとはいえ、「危険だから行くな」と言われていた地域に勝手に行って、その上「助けてくれ」と身代金まで取られてしまうなんて…ということです。

かく言う私の知人も、ミンダナオ島マラウィ (フィリピン南部) に足を踏み入れ、紛争地取材を経験しています。イスラム国(IS)に忠誠を誓う武装勢力と国軍部隊が銃撃戦を繰り広げていた渦中で、市街地ではライフル銃の連射音や軍用ヘリによる空爆音が鳴り響き、かなりの死者数を出していたようです。

 

このように、戦地では「絶対に安全」な状況などあり得ません。自分で行ったのだから、何か起きたらすべて自分に責任があるのです。

これは戦地取材でなくても同じこと。自分の意志で行きたい国に行って「貧乏だから帰れない」状況に陥ったとしても、やはり「自己責任」なのです。世間でこの自己責任論が共有される背景には、「他人に迷惑をかけない」のを是とする日本特有の価値観が関係しているのかもしれません。

残念ながら、海外へ一歩足を踏み出してみると、案外「日本人って貧乏なのかもしれないなー」と感じさせられることが少なくありません。

あなたは、自己責任を覚悟の上で海外へ移住したいと思いますか?それとも、頑張って日本で奮闘してみますか?どちらがあなたにとって本当に幸せな道なのでしょうか。よ〜く考えてみてくださいね。