マレーシアの年金制度【まとめ】



「近い将来、日本の年金制度は崩壊するかもしれない」「崩壊しないにしても、現行のものよりはかなり条件が厳しくなるに違いない」…と考えている方、少なくないのではないでしょうか。

なぜなら、「少子・超高齢社会」に全く歯止めがかからず、「労働人口の減少」「外国人労働者 (移住者) の増加」「社会保障費の急増」などが加速する一方で、年金の受給年齢がどんどん上がっていくことが容易に予想されるからです (減額もしかり)。

 

今の若い世代の人たちは、いったい何歳になったら受け取れるようになるのでしょうか?もしかすると80歳?支払うばかりで受け取れるかわからない若い世代の人たちは、この状況をどのように考えればいいのでしょうか?

不安の多い「年金」に対して、どう向き合えばいいのでしょうか?

 

マレーシアにもある強制加入の年金制度

実は、(海外の) 移住先として人気の高いマレーシアには、「EPF」と呼ばれる (日本の) 年金制度のようなものがあります。マレーシアには日本の「退職金」にあたるものが存在していないため、(その退職金と年金をカバーする意味合いで) 強制的にEPFに加入させられます。

これは、給与天引きで積み立てていったお金を、55歳またはそれ以降に、退職した際受け取れる制度です。本人が積み立てた金額に、かなり多くの利子がプラスされて払い戻される仕組みとなっています。

 

 

マレーシア人の考え方

マレーシアという国は資源が豊富で産油国でもあるためか、多くの人たちは「毎月きちんと貯金して将来に備える」という考えを持っていません。

「お金があれば、貯金よりも将来のために不動産を購入したり投資をしたりする」という考え方を持っています。

そのため、国が国民の将来を考えて「EPF」という制度を導入し、きちんと貯蓄できる管理システムを作ったのでしょう。

 

 

日本との違い

マレーシアでは、「自分たちが支払ったお金は上の世代の人たちのために」という日本の年金制度とは異なり、「自分たちが支払ったお金は将来自分たちで受け取る」ことができます。しかもそれなりに利子がプラスされて。

もちろん、支払いは雇用される側の人たちだけでなく、雇用している会社も負担します (雇用する会社が基本給の13%を負担し、本人が11%を負担)。このように、合計で基本給の24%を退職金と年金に充てるのがマレーシア流なのです。

 

マレーシアの人たちは会社を何度も転々とし、何度も転職するのですが、EPFの番号は勤め先が変わっても引き継がれる仕組みになっています。

さらに、雇用者本人が負担している分の積立金は所得税から全額控除されます。

 

 

金利が良い

マレーシアの定期預金の金利はだいたい3~4%程度です。これに対して「EPF」は、積み立てている原資に対して5~6%の利子が複利で付いてきます。

そのため、55歳以降の退職時には積み立てた金額よりもかなり多くのお金が「退職金 + 年金」として払い戻されるのです。

 

 

日本人もEPFに加入できる

マレーシアにおいて、外国人労働者に対する社会保障制度は存在しますが、そのほとんどは一定の地域 (主に発展途上国) の外国人のみが対象となっており、日本人には該当しないケースがほとんどです。そのため、基本的に日本人はそれぞれの会社が推奨している保険会社に加入するのが一般的となっています。

ただし、この「EPF」には日本人も加入することができます。登録要件は、ローカルスタッフと変わりません。しかしながら、会社の負担額は基本給の12%…ではなく、RM5 (%でない) のみになります。

 

 

このように、日本人のような外国人であっても任意でEPFに加入することができるわけですが、会社側も毎月の積立金をRM5も負担するわけなので、「長期就労」が前提条件となります。また、経営者が加入を認めてくれないと入れません。

加入できたとして、マレーシアである程度の期間働いた日本人が55歳になる前に日本に帰国することになった場合であっても、積み立てた元本と利子は受け取ることができます。

 

 

EPF制度のデメリット

以上述べてきたように、基本的にEPFは「公平」かつ「優秀」な制度と言えるでしょう。日本の年金も、このEPFのように「支払った本人が自分で受け取れる」積み立て貯金のようなものだったらどんなにいいか。。。

ただし、このEPF制度にもいくつかの弱点が存在します。

 

 

①  国から生活を保障されない

マレーシアは (日本と比べて) 、社会福祉制度 (公的医療制度など) が整っていません。もし万が一マレーシアで病気 & 怪我をしたら、(自分でしっかり医療保険に加入していない限り) 「医療費を全額自己負担」しなければなりません (ただその分、受診料は他国に比べてかなり低額)。

(医療のレベルはそれほど悪くはありません)

 


②  長生きすると困ってしまうかも…

EPFは、生きている限りず〜っと受け取れる仕組み…ではありません。退職時にまとめて大きな金額をもらう制度であるため、あまり長生きしすぎるとお金が途中で尽きてしまう可能性も…

 


③  経済格差の元

人口の約6割を占めているマレー系マレー人は相当な好待遇をされています。一方で、中華系やインド系をはじめとする他の人種の人たちは、高待遇を享受できるわけではありません。EPFの制度上も、不公平感があるようです。

 

 

日本人が海外で長期滞在するということ

日本人が海外で長期滞在するということ。それは、その国の税金・社会保障・医療の3本柱をしっかり理解しなければならないということに他なりません。

 

 

マレーシアに関して言えば

 

①  住民税がない

日本で住民票を抜いてマレーシアに移住した場合、(マレーシアには住民税という概念・制度がないため) 日本でもマレーシアでも住民税を支払う必要がありません。

 


②  消費税がない

日本では消費税がどんどん上がっていく一方ですが、マレーシアにはこの消費税が存在しません。世界的にも稀有な国の一つなんです。

 


③  固定資産税は安い

例えば、インドネシアでは外国人名義で土地・建物を購入することは禁じられていますし、タイではコンドミニアムなどの一部物件に限られています。しかしマレーシアでは、(金額の規定はあるものの) 外国人でも土地・建物を所有することができます。さらに、その固定資産税が (日本と比べて) 激安なのです。

 


④  銀行金利が良い

今後変わってくるかもしれませんが、それでも、日本と比べると銀行の金利は断然お得です。現在、安定して3〜4%を保っています。世界、特にアジアの中ではこれ以上の金利で話題になっている国もありますが、安定性も考えるとマレーシアはお得と言えるでしょう。ペイオフ制度 (銀行が破綻した時に戻ってくる保障) もあります。さらに金利に税金がかかりません。

 

これらは素晴らしいメリットですね!

 

 

おわりに

もちろん、「海外に移民する」ということは、裏を返せば「自己責任が増える」ということでもあります。自分の力でどうにかする…という考え方は不可欠です。

例えばマレーシアでは、衛生的な問題でお腹を壊すことは珍しくありません。このようなことも含めて、総合的にタフでなければ生きていけない部分もあるでしょう。

将来、たとえどこに住んだとしても、自分でどうにかするという考え方を持つ必要があるのです。あなたは大丈夫ですか? ☺️