数年前、私は北朝鮮観光ツアーを中朝国境の街・丹東にある旅行代理店に依頼しました。事前にメールで必要事項を送付し、ビザや電車の手配をしてもらいました。
日本円で12万円ほどを中国元で支払い、ビザが渡され、丹東駅 (中国・遼寧省) から北朝鮮行きの列車に乗っていざ出発!
いざ北朝鮮へ!
電車は快適な一等寝台です。丹東駅を昼前に出発した電車は、発車してすぐに国境に架かる鴨緑江大橋を渡ります。車窓からは、朝鮮戦争時代にアメリカ軍によって爆破され橋脚しか残っていない橋が見えます。
いよいよ北朝鮮に入国 (中国と北朝鮮は時差が1時間)。橋を渡ってまず見えるのは遊園地の廃墟です。車内ではパスポートコントロールに加え厳格な荷物検査 が行われます。
以前は持ち込めなかった携帯電話やカメラも持ち込めるようにはなったのですが、メーカー名やGPSの有無などについて細かく質問されました。書籍のチェックも厳しく、「面倒くさいなぁ」と思いながらも何とか没収されないように必死で説明しました。
そんなこんなで結構な時間を費やされたのですが、何とか無事にクリア!(日本人はパスポートに入国スタンプは押されず、ビザに押されて返却)
パスポートの返却が終わると、電車はいよいよ平壌に向けて走り出します。平壌に着いてからは常にガイドの監視下に置かれる予定なので、ある意味今が一番自由な時間なのかもしれません。
車窓からは日本の報道番組でよく流されているような貧しい田園風景が広がっています。社会主義国だからかなのでしょうか、同じようなデザインの家が建ち並んでいます。道路はほとんど舗装されておらず、平壌のかなり近く辺りまで、自動車は全く走っていませんでした。
6〜7時間をかけ、電車はようやく平壌へ。さすがに、首都平壌まで来るとそれなりの建造物が立ち並んでいます。
平壌の高級ホテルに宿泊
平壌駅に着いて電車から降りると、「日本の方ですか?」と日本語で話しかけられます。いよいよガイドと合流です。平壌駅の夜景を写真に納めてから北朝鮮製の車 (悪くはない) に乗ってホテルへと向かいます。
(ツアー中はパスポート・ビザはガイドが管理します。入国以外の多数のスタンプが押されていました。)
私が泊まったホテルは平壌が誇る超高級ホテル 「高麗ホテル」です。45階建てのツインタワーで、カードキーで入室します。日本語が記載されている…ということは、日頃から日本人の宿泊客もそれなりにいるということなのでしょう。
ちなみに客室の便器はTOTO製で、エレベーターは日立製でした。
ただ、、、ホテルは一見立派に見えますが、部屋や廊下の明かりが微妙に暗かったり、壁が微妙に汚れていたり。良くも悪くも「北朝鮮らしいなぁ」と感じつつ、売店に行ってみました。
ここでは飲食料品などの他にも北朝鮮のお土産が買えます。支払いには中国元、アメリカドル、ユーロ、日本円など多くの通貨が対応しています。
「偉大な男 金正日」…のような日本語に翻訳された本も多数売られています。(私は購入しませんでしたが) 興味のある方は是非 (笑)
観光ツアー
北朝鮮の旅行ではガイドが必ず付いていますし、強制的にいろんな観光名所に連れて行かれます。
① 万寿台大記念碑
金日成首席 & 金正日総書記の銅像が建てられている場所。彼ら的にはここが観光最大の目玉だと思っているのでしょう。ちなみにここで旅行者が必ずしなければならないのは献花。お花代はツアー料金に含まれていませんので、別途 (日本円にして) 1,000円ほどのお金がかかります。
② 人民大学習堂
人民大学習堂は金日成70歳の誕生日を記念して建造された建物で、中は図書館になっています。
③ 万景台学生少年宮殿
楽器の演奏や合唱・踊りなどを見ることができます (半強制的ですが)。
④ 凱旋門
高さ60m。世界で一番大きい凱旋門だそうです。この凱旋門は金日成の70歳記念で建てられました。
⑤ 金日成の生家
⑥ 主体 (チェチェ) 思想塔
朝鮮労働党の政治思想である主体(チェチュ)思想を体現した塔です。金日成が提唱したチェチェ思想 (無神論) は、世界中に信奉者がいるようです。
⑦ 地下鉄の駅
駅構内には豪華なシャンデリアや長いエスカレーターがあり、自慢のようです。
⑧ 軍事境界線:板門店
などなど。
おわりに
他にも、
プロパガンダのために様々な施設や広場などに連れて行かれるわけですが、「北朝鮮」を知るには致し方ありません。
夏の時期であればアリラン祭が開催されていますし、有名な平壌冷麺は必ず食べることになるでしょう。
こうして、数日間のツアーは終了し、無事中国へと戻って行くわけです。丹東に到着すると中国の入国審査に移ります。入国審査が終わるまでは電車内で待機。。。
正直、チャラチャラした気持ちで北朝鮮に行くべきではないと思っていますし、北朝鮮に外貨を供給するという意味でも反対する方も多いことでしょう。倫理的に考えれば、日本国民として訪れるべきではないことは明らかです。しかしながら、敵を知ることもまた大切なこと。
ガイドや店員たちの反日的な言葉と、時々現れる羨望の眼差し。一度でも北朝鮮を見れたことは、非常に貴重な体験だったと思っています。
ただし、「観光」や「娯楽」としての旅行に北朝鮮はオススメしません。同じお金を払うのであれば、もっと楽しく、もっと有意義に、もっと快適な旅行ができますし、世界にはもっと訪れるべき場所がたくさんあると思うからです。
というわけで、賛否両論ありますでしょうが、何かしらの信念がおありの方でしたら一度行ってみるのもいいのではないでしょうか。