誰もが気軽に「海外旅行」できる時代ではありますが、渡航先には「免疫力が低下」し「体調を崩しやすい」要因がたくさんあります。中でも「感染症」は大問題!滞在中は大丈夫でも、帰国後に体調を崩すケースだって十分に考えられるのです。なので、できる対策は確実に行なっていきましょう。
情報収集 & 準備が大事
渡航先で最も感染の可能性が高いのは、食べ物や水を介した「消化器系の感染症」です。また、日本では発生していない動物・蚊・マダニなどを媒介とする病気が流行している地域もあります。というわけで、母子手帳などで、これまでに自分が受けた予防接種について確認しておきましょう。出発前には、「渡航先で流行している感染症」「そのための予防接種」「携帯すべき薬」「現地の医療事情」などを十分調べましょう。ちなみに予防接種で予防できる病気には黄熱病、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎、ポリオなどがあります。
渡航先や滞在期間、渡航先で何をするか、年齢、健康状態、予防接種歴などによって受けておくべき予防接種の種類は異なります。また、予防接種の中には数回摂取する必要があるものもありますので、旅行直前に慌てることなく、少なくとも出発3ヵ月前には情報収集しておきましょう。渡航先によっては、入国の際に予防接種証明書が必要な場合があります。たとえば、アフリカや南米の熱帯地域の国々へ入国する際は、黄熱病の予防接種証明書が必要です。
虫からの感染症
蚊・ハエ・ノミなどは、黄熱病・マラリア・デング熱・クリミア・コンゴ出血熱・ジカウイルス感染症などの病気を発症させるウイルス・細菌・寄生虫などの病原体を持っています。これらがいるであろう場所はできるだけ避け、虫除け剤や蚊取り線香を積極的に利用し、長袖・長ズボンの着用を心がけましょう。また、ダニなどは家畜やペットに寄生している可能性もありますので動物との接触は極力控えましょう。加えて淡水 (川・沼) で、皮膚からの侵入によって寄生虫などに感染する危険性もあります。傷口からの感染を防ぐために、けがをしないようにしましょう。
飲食物からの感染症
A型肝炎・コレラ・赤痢・腸チフス・寄生虫などの感染症の多くは、食べ物や飲み水が原因で起こります。特に衛生状態のよくない地域での飲食には細心の注意を払いましょう。水も食べ物も生物は避け、果物は皮付きのものを選び、自分で剥いて食べましょう。こまめな手洗いは必須です。
動物からの感染症
狂犬病・エボラ出血熱・エキノコックス・鳥インフルエンザなどは、動物の体や毛に付着している「寄生虫の卵や病原体を含んだ排泄物」などに触れた手で食事をしたり、排泄物に汚染された食品を食べることで感染します。また、汚染された排泄物が乾燥しほこりとなって吸い込んでしまうことも考えられます。排泄物に潜んでいる寄生虫が直接皮膚から侵入してくることだってあるのです。というわけで、旅行先では動物に近づかない、もし触れてしまったら石鹸でしっかりと手を洗うことを怠らないようにしましょう。
特に「狂犬病」(死のウイルス) は発病すればほぼ100%死亡しますし治療方法がないため、十分な注意が必要です。主にイヌ・ネコ・サル・キツネ・アライグマ・コウモリなどがウイルスの感染源です。「やばい」と思ったら水と石鹸で徹底的に洗い流し、消毒液などで消毒し、速やかに医療機関を受診し、狂犬病ワクチンを接種してもらいましょう。
人からの感染症
SARS (重症急性呼吸器症候群・2002年)、MERS (中東呼吸器症候群・2012年)、新型コロナウイルス (2020年)やポリオ、性病などは人を介して感染します。「感染したかもしれない」と思ったらすぐに検査を受けましょう。ただしエイズの場合は感染可能性日から3カ月が過ぎなければ正しい検査結果が得られません。このように、感染症の中には潜伏期間があるものがあります。少なくとも6ヵ月間は旅行先に関連した感染症を発症する可能性があります。
おわりに
現代のように便利な交通手段がなく、衛生状態が悪く、情報収集もままならなかった時代の旅には、多くの困難や苦労がつきものでした。そうした現実もあってか、「travel 」(トラベル) は中期フランス語の「苦しんで旅をする」という意味が語源とも言われています。異国の地に行けば、日本とは異なる文化・歴史・芸術・風習・食などを直に体感することができます。現地民・野生動物との交流にドキドキしたり、美しい景色・建築物などにワクワクしたり・・・何ものにも代えがたい貴重な経験ができます。そんな海外旅行が思いもよらぬ「感染症」などの苦しみによって台なしにならないように、侮ることなく準備万端で旅立ちたいものですね。