海外旅行で気をつけるべき「レプトスピラ症」とは



毎年1,500万人以上もの人たちが海外旅行に出かける日本人にとって、東南アジアなど熱帯地域の国々はとても人気です。しかしながら、水辺レジャーには注意が必要だということを押さえておきましょう!

なぜなら、レプトスピラ症などの感染症に感染する恐れがあるからです。この病気には、世界中で毎年数十万人もの人が感染しているとの報告もあります (非常に高い数字ですね)。

 

レプトスピラ症とは

レプトスピラ症は、病原性レプトスピラという細菌に感染することで起こる急性の熱性疾患のことです。このレプトスピラは、ネズミなどの野生動物や家畜、犬猫などのペットの腎臓に保菌され、尿とともに排出されます。

その尿が土・川・湖などに流れ込み、皮膚に触れたり、汚染された飲食物を摂取することによって感染するのです (汚染された土や保菌動物に直接触れても感染)。
 


 

これは全世界で発生しており、特に熱帯・亜熱帯地域に多く見られます。近年では、ブラジルなどの中南米やフィリピン・タイなどの東南アジアなどで流行が報告されています (日本では、沖縄などで散発的に発生)。

潜伏期は5〜20日ほど。ともあれ、特に警報が出ているような場合には不用意に川や湖などに入らないようにしてくださいね (大雨や洪水の時にはさらなる注意が必要です)。

 

 

症状と治療法

レプトスピラ症は、感冒様症状のみで軽快する軽症型から、黄疸 (おうだん)、出血、腎障害を伴う重症型(ワイル病)まで多彩な症状を示します。

10日程度の潜伏期を経て、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、腹痛、結膜充血、倦怠感などが生じ、稀に黄疸が出現したり、肺出血、急性腎不全を引き起こす場合もあります。
 


 

特異的な症状がないため初期診断は困難です。軽症型の予後は一般的に良好ですが、ワイル病では早期に適切な治療がなされない場合、死亡率は20~30%です。急性腎不全を起こしていれば透析治療が必要になるのでくれぐれもご注意を!

治療法としては、抗菌薬 (ペニシリンなど) の投与が主体となります。

 

 

予防など

日本国内ではあまり見られなくなってきましたが、熱帯・亜熱帯地域の国では突然流行することがあります。そんな時に、「川や湖での水泳」「急流をゴムボートなどで下るラフティング」「トレッキングで川を渡る」といったアクティビティに参加すると危険!

タイなどでは、大雨による洪水後にレプトスピラ症の集団発生が起こる場合がありますので、台風などで洪水に見舞われた地域を訪れる際にはしばらくアクティビティを控えましょう。そして、万が一水に触れてしまった際にはしっかりと洗い流しましょう。

 

◉  流行地域では不用意に水に入らないこと

◉  洪水の後は絶対に入らないこと

 

どうしても水に浸かる必要がある場合は、ゴム長靴・ゴム手袋を着用しましょう。

予防ワクチンも開発されてはいますが、接種可能な施設は限られています。抗菌薬 (ドキシサイクリン) の内服も予防効果がありますが、長期間の服用は奨められません。