厚生労働省が発表した「人口動態統計」(2019年秋) によれば、「日本の出生数はついに90万人を割り込む」見込みなのだとか。ちなみに2018年度の合計特殊出生率 (一人の女性が出産可能とされる15〜49歳までに産む子供の数の平均) は1.42。残念ながら出生数は、2016、2017、2018年 (91.8万人) と3年連続で100万人を割り込んでしまいました。今後は、団塊ジュニア世代の出産が一段落してさらに下降することが懸念されています。
第1次ベビーブーム期には約270万人、第2次ベビーブーム期には約210万人だった年間出生数は、1975年に200万人を割り込んで以来、毎年減少を続けています。ところで少子化に悩んでいるのは日本だけではない…ということをご存知ですか。
「アジア」は世界で最も人口が多い地域で、中国・インドのように国土が広い国からシンガポールのように一つの都市が国家を形成している国まで様々です。そんな (人口増加に大きく寄与しているはずの) アジアで、今「日本と同じように出生率が低下」してきているのです。
《続きを読む》人口の増減に一番大きく影響するのが「出生率」です。中でもニュースなどで頻繁に取り上げられるのが「合計特殊出生率」。これは「一人の女性が生涯 (15〜49歳の期間) に何人の子供を持つか」を計測しています。世界各国で計測されているんですよ。
近年は乳幼児の死亡率が低下したことで「合計特殊出生率」が2.1以上の値を取っていれば人口は増加傾向にあると考えてよく、逆に2.1以下ならば減少傾向にあるということになります。他にも、人口1,000人あたりにおける出生数を計測する「普通出生率」というものも各国で計測されています。ちなみに日本の普通出生率は 7.4 (1000人あたりの出生数は7.4人) と非常に低い数値になっています。
《続きを読む》世界の総人口は現在およそ77億人 (2050年頃には97億人になるとの予想もありますが、果たして本当にそうなるのでしょうか?)。中でもアジアは世界で最も人口が多い地域です (中国は約14億人、インドは約13.4億人、インドネシアは約2.6億人、パキスタンは約2.1億人、バングラデシュは約1.6億人、フィリピンは約1億人)。
ちなみにインドは2027年頃に中国を抜いてトップに躍り出ることが予測されています。日本は約1.26億人で世界第10位です。その他、数千万規模の国や地域も多く、ベトナム (9,500万人)、タイ (6,900万人)、韓国 (5,100万人)、ミャンマー (5,000万人) などとなっています。
参考までに他の国々もみてみましょう。アメリカ (3.2億人)、ブラジル (2億人)、ナイジェリア (1.9億人)、ロシア (1.4億人)、メキシコ (1.24億人)…そしてヨーロッパをみてみると、ドイツ (8,300万人)、フランス (6,700万人)、イギリス (6,600万人) などとなっています。
最後に、マレーシア (3,200万人)、台湾 (2,300万人)、北朝鮮 (2,500万人) ということも付け加えておきましょう。このように、アジアには人口規模の大きな国や地域が本当に多いのです。
《続きを読む》そんなアジアにおける「合計特殊出生率」の水準をみてみると、最も水準が高いのはラオスの4.6。次いでパキスタン(4.0)、カンボジア(3.9) 、バングラデシュ(3.1)、フィリピン(3.0)、インド(2.9)、マレーシア(2.8)となっています。
一方で、「合計特殊出生率」が2を下回る国や地域も少なくありません。香港(0.98)が最も低く、台湾(1.12)、韓国(1.13)、シンガポール(1.25)と続いており、日本 (1.42)もちょっと前に比べると微増してはいるものの、基準値となる2.1を大きく下回っています (中国は1.7)。このように、アジアでは合計特殊出生率が高い国がある一方で東アジアの主要な国や地域では「超少子化」ともいえる状況が発生しているのです。
《続きを読む》出生率の低下は、日本や欧米諸国だけでなくアジアでも起きている現象です。振り返ってみると、1970年頃の日本の合計特殊出生率の水準は 2.13。これに対してタイ (5.02)や韓国 (4.50) などは高水準で、当時の全世界平均も4.5ほどと高い傾向にありました。台湾 (3.71)や香港 (3.29)、シンガポール (3.10) などもそれなりに高かったのです。
しかしながらその後、合計特殊出生率は世界的に低下傾向となり、多くのアジア諸国において現在の日本 (1.42)を下回る水準となっています。少子高齢化は日本だけの問題ではないのです。
《続きを読む》中でも韓国はここ数年、特にひどい低調傾向にあります。2018年に韓国で生まれた子どもの数 (出生数) は前年より3万人も少ない約32万人で、過去最少でした。合計特殊出生率は0.98で、1970年以来初めて1を割り込んだのです。少子化が進む日本よりも急速に出生率が低下しており、世界でも最低水準となりました。
この背景には若者の経済不安があります。韓国では2010年頃から「恋愛・結婚・出産」を諦める「3放世代」という言葉が使われ始めました。「財閥系の大企業と中小企業の待遇差」や「不安定な労働市場」に不安が広がったためです。加えて、結婚よりキャリアアップを優先する「未婚女性の増加」もあります。産休をとると昇進が遅れるという企業文化が背景にあるのです。
アジアでは他に台湾が出生率1を割ったことがありますが (2010年)、その後子育て世代への支援を強化したことで現在はやや回復しています。
そんなわけで、韓国では予想よりも早く人口減少が始まりそうです。韓国内では人口が減少に転じる時期を2028年頃と考えていますが、もう少し早まる可能性もありそうです。出生率低下が続けば、社会保障や経済成長に悪影響が及びます。韓国政府は過去10年間で130兆ウォン (約13兆円) を投じて保育所の増設などの少子化対策を進めましたが、目に見える効果はあがっていません。
1960年頃は5だった「世界」の合計特殊出生率は2016年には2.44まで低下しています。さらに、日本や韓国など少子化が加速する国を多数含む東アジア地域の合計特殊出生率は2016年時点で1.8。また、人口増加が加速している (印象の) インドを含む南アジア地域においても、合計特殊出生率は2.46と世界平均を若干上回る程度になっています。