メキシコで3人の遺伝子をもつ赤ちゃん誕生!



母系遺伝性の難病「ミトコンドリア病」(難病)などの予防のために、女性2人と男性1人の遺伝子を持つ受精卵を作る技術がイギリスで合法化されました (2015年)。

「それはあまりにもリスキーだ!」と安全性や倫理面から反対の声が挙がる中、2016年にメキシコで世界初の「3人の親の遺伝子」を持つ赤ちゃんが誕生したのです (医療チームはアメリカ)。

 

「画期的な出来事に興奮している。この技術の可能性は無限だ!」

こう語ったのは、ニューヨークの不妊治療センターから医療チームを引き連れてメキシコで治療を行ったジョンさんです。

 

 

ミトコンドリア病とは

ミトコンドリア病とは、全身の細胞の中にある小器官「ミトコンドリア」の異常によって引き起こされる病気のことです。このミトコンドリアの変異が原因となって、身体の様々な部分 (脳・骨格筋・心筋など) に異常が発生してしまいます。

ミトコンドリアの働きが低下すると細胞の活動も低下し、例えば脳の神経細胞であれば「見たり」「聞いたり」「理解したり」…といったことに支障をきたします。心臓の細胞であれば血液を全身に送ることができなくなりますし、筋肉の細胞なら運動障害が起こったり疲れやすくなったりするのです。
 

 
こうした、ミトコンドリアの働きが低下することによって発症する病気を総じてミトコンドリア病と呼びます。多くは遺伝性のものですが、中には薬の副作用などで二次的に罹ってしまう方もいるようです。

 

 

不妊に悩む夫婦の決断

(上述した通り) 両親と卵子提供者、3人のDNAを持つ受精卵によって赤ちゃんを誕生させる研究にアメリカの研究チームが世界で初めて成功させました (in メキシコ)!

「リー脳症」(ミトコンドリア病の一つ) という遺伝性の神経系障害を持つ母親の卵子から抽出した核DNAと、卵子提供者の女性のミトコンドリアDNA、そして父親のDNAを持つ赤ちゃんは男の子で、これまでのところ健康上の問題はないとされています。

 

※ 写真はイメージです

 

この赤ちゃんの母親は「リー脳症」を患っており、それが原因で2人の子供が出産後に相次いで死亡。その後複数回にわたって流産も経験しているそうです。

「それでも、何とかして自分たちの赤ちゃんがほしい!」

 

そう思ったヨルダン人の夫婦は悩み考えた末に、2人の遺伝子を受け継ぎつつも健康な赤ちゃんを授かるために、ニューヨークの医療機関に相談したのです。

しかしながらアメリカでは、不妊治療を目的とする3人のDNAを持つ受精卵を作ることは法律で認められていません。そこで、規制のないメキシコで治療が行われることとなったのです。

 

 

専門家からは不安の声も

母親は難病を患っています。「それでも、どうしても子供が欲しい!」・・・この切なる願いを叶えるために、アメリカの医療チームは特殊な医療技術を用い、母親の卵子から (ミトコンドリアDNAが含まれない) 核のみを取り出すことを試みて見事成功したのです!

こうして、別の女性の卵子にその核が移され、母親の核DNAと卵子提供者のミトコンドリアDNAを併せ持つ卵子が作られた後、父親の精子を受精させて受精卵が作られたのです。

 

 
しかしながら、この研究に携わっていない専門家などからは、「明らかになっていないリスクの部分が多すぎる!」として不安が指摘されています。。。

 

 

人間が踏み込んでいい領域?

妊娠するために、あるいは同じ障害を愛する子供に引き継がせないために、「医学的な技術」が必要な場合もあるでしょう。しかしながら一方で、倫理的な問題もいろいろと生じてきます。

「優れている」「健康な」子孫を残すために第3者のDNAを借りて子供を作ってしまう…ということもその一つ!技術的には可能であっても、こうした行為はやってはいけないことなのです。

 

不妊で悩んでいる方、持病が原因で子供を持つことが困難な方などにとっては、今回の「3人のDNAを持つ受精卵による出産」が成功したというニュースは希望につながることなのかもしれません。

それでも、親の思いだけでそこまでやっていいのかという倫理的な問題、そして技術が悪用されるのではないかという不安要素も。。。

 

今後、この手の議論が世界中で広く行われていくことになるでしょうが、「自然の摂理」に逆らった (クローンなどの) 技術は持たない方がいいような気がしてなりません。

 

 

 

 

まとめ

今回の医療技術によって、難病の「ミトコンドリア異常の遺伝を断ち切ること」には成功できるかもしれません。

しかしながら、これは動物実験ではなく人間のケースです。安全性がきちんと立証されるまで数年間は注意深く見守っていく必要があるでしょう。さらに、きちんとした規制も設けられるべきです。

生殖医学にとって新たな一歩を踏み出したことは素晴らしいことです。とはいえ、規制のない状況下でこのような「遺伝子の治療」が行われること自体が危険な行為だと思うのです。

 

「男女を産み分けること」ができたり、「容姿や能力を選ぶこと」ができたり。。。

無限の可能性を追求することは「魅力」ではありますが、遺伝子を操作して「デザイナー・ベイビー」を作ってはならないのです。