中国の大気汚染はとても深刻な状況です。あるデータによれば、大気汚染が原因で毎日4,400人もの人々が命を落としている計算になるとか。。。
中国政府もこの社会問題を強く認識し、2008年の北京五輪開催が決まってからは北京市の大気汚染を緩和すべく、建設工事を中断したり、工場や発電所の操業を停止したり、車両規制を行なったりと、様々な対策をとってきました。
しかしながら、このような対策には多大なる経済的コストを伴います。おまけに一時的なものであるため、“青い空”は長続きしません。
そんな中、住民にわずかな望みを与えるのが「グリーン・ホライズン」計画なるものです。2014年に始まったこのプロジェクトでは、大気汚染の管理や予測の改善に取り組んでいます。
観測所、衛星、ソーシャルメディアから取得した北京に関する膨大なデータを解析し、汚染物質の発生源を特定するだけでなく、データの相関関係も解析。大気汚染予測の精度を劇的に上げることに成功したようです。
しかしながら、中国の広大な面積を考えると、どんなに予測の精度を高めても、「対策」は非常に難しいとも言えます。
「一日4400人が死ぬ」。。。
早急に何とかしないと!
ただ、北京のような大都市における大気汚染は気象に大きく左右されるのです。大気汚染物質が都市の外に流れるか発生源の近くに蓄積するかは風によって決まるのです。
汚染物質が大気中からどれだけ早く取り除かれるかは、雨や雪が影響していますし、暖房用に燃やされる石炭の量や汚染物質がどれだけ上空に上昇するかは気温が影響しているのです。
データ集めも大事ですが、同時並行で具体的なアクションをもっと積極的に行なっていかないといけませんね!
中国は2017年の年始を、史上最高レベルの「赤色警報」と共に迎えました。濃霧により視界が50メートル以下に悪化。航空便や地上交通に大きな混乱が生じたのです。
ハルビン、広州、成都、杭州など、北京以外の各都市でもスモッグに警戒を呼び掛ける「赤色警報」が発令され、私用車の交通が半分に制限されたり、工場の多くが操業停止を強いられました。

こうした中、中国のインターネット検索エンジンでは、大気汚染に関連する検索数が過去最多を記録!
「どこに行くべき?」
「洗肺(肺の洗浄)」
「森」
…といった検索が相次いだのです。また、中国最大の旅行サイト「シートリップ」(携程)では、「避霾(スモッグ回避)旅行」に関する情報まで公開されています。
近年、中国では「避霾旅行」が定着してきています。多くの中国人が大気汚染を逃れるために海外へ渡航しており、新鮮な空気に対する欲求が、中国における海外旅行需要の拡大に大きな影響を与えているのです。
参考までに、エール大学が毎年まとめる「環境パフォーマンス指数(EPI)」によると、空気の質が良い上位10か国は上から順に、セーシェル、トリニダード・トバゴ、モルディブ、アイスランド、オーストラリア、ガイアナ、ニュージーランド、キューバ、モーリシャス諸島、ベリーズとなっています。


さて、
シートリップ調べによりますと、新鮮な空気を求める中国人の旅行先人気ランキングは以下の通りです。
- タイ
- 日本
- インドネシア
- オーストラリア
- モルディブ
- ニュージーランド
- アメリカ
- カナダ
- モーリシャス諸島
- セーシェル

日本を訪れる中国人観光客は、澄んだ空気を求めて北海道や九州、沖縄などの小さな村々を訪れているといいます。また、オーストラリアやニュージーランドは夏冬が逆転する気候が、カナダは美しく広大な国立公園が人気となっています。

いま中国では、大気汚染レベルの上昇と旅行需要の増加に明確な相関性が発生しています。「避霾旅行」をする人たちの出身都市は、大気汚染が特に深刻な北京や天津に加えて、上海、成都、広州、深セン、重慶、西安、武漢、済南が上位10位に入ります。
また、近年、大気汚染レベルが上昇傾向にある長江デルタ地帯の江蘇省や浙江省でも「避霾旅行」の需要が高まっているといいます。
2016〜2017年の冬旅行は、北欧でのオーロラ鑑賞ツアーが4倍に急増しているとか!また、「世界最後の浄土」とも言われる南極を訪れるツアーも費用が高額にも関わらず人気のようです。
経済的にコストを抑えた旅行先としては、韓国の済州(チェジュ)島、タイのプーケット、インドネシアのバリ島、フィリピンのボラカイ島などが人気みたいですね。
皆さんは、次の旅行先をどういった理由で決めていますか?
有名観光地?
グルメ?
世界遺産?
美しいビーチ?
基本、楽しいことばかりを優先して選んでいますよねっ!
でも、
多くの中国人たちは違います。まず空気の質と気候で絞り込み、次に距離や乗り継ぎの便利さなどを考え、旅行先を決定しているようです。
パッケージツアーもそうした需要に合わせて、「きれいな空気と酸素で肺洗浄」や「乗り継ぎなし、スモッグなしの暖かい冬」…といった宣伝文句で売り出しているらしく…
であれば、
旅行先でゴミのポイ捨てなどはしないでいただきたいものですね!