「パレスチナに一緒に行かない?」と友人や家族に相談すると「危険だから嫌だ」と断られてしまいます。残念ながら「やばい」イメージは拭いきれません。危険なエリアがあるのは事実ですし、ガザ地区はよくイスラエル軍に攻撃されていますしね。
一方で、イスラエルはエルサレム (聖地) ということもあってか、「安全」で「世界一楽しい国」というイメージがあるようです。
というわけでここでは、(誤解されがちな) パレスチナに関する基本 & 観光情報をまとめてみました。好奇心旺盛な方はパレスチナに直接足を運んで、「現地でいったい何が起こっているのか」「人々はどんな暮らしをしているのか」を探ってみてはいかがでしょうか。
《続きを読む》「パレスチナ」は国際連合未加盟なのですが、多くの加盟国 (137カ国) が「国家」として認めている主権国家です (ただし、日本を含むG7などの主要な国々 (50カ国ほど) は「将来の承認を予定した自治区」として現時点では未承認状態となっています)。つまり、世界の常識ではまだ「国」ではないのです。その領土は「ヨルダン川西岸地区」および「ガザ地区」から成っており、東エルサレムを首都としています。
これらのエリアは1994年以来「パレスチナ自治区」と称され「自治政府」が存在していますが、現状なまだ正式な「独立国家」とは言えません。「ヨルダン川西岸地区」の6割ほどと東エルサレムはイスラエルに占領されており、事実上の首都はラマッラー (西岸地区) で、最大の都市はガザとなっています。パレスチナは現在ほぼ独立状態にありますが、厳密にはイスラエルの管轄下にあるのです。
◉ 人口 : 約500万人 (西岸地区300万、ガザ地区200万)
◉ パレスチナ難民数 : 約600万人
◉ 人種 : アラブ人
人口の過半数は15歳以下の子供たちで、面積は「ヨルダン川西岸地区」が三重県ほど、「ガザ地区」が種子島ほどとなっています。
これらの面積は第二次世界大戦終結以前のものから、国連の分割決議案、中東戦争を経て、大幅に縮小されました。現在も、面積は縮小し続けています。
◉ 言語 : アラビア語
◉ 宗教 : 90%以上がイスラム教徒
◉ 通貨 : イスラエル・シュケル (自国通貨なし)
《続きを読む》パレスチナ領土の中に空港がないため、パレスチナへはイスラエルあるいはヨルダンから陸路で入国するのが一般的です。そして、パレスチナは「ガザ地区」と「ヨルダン川西岸地区」の2つに分かれているのですが、観光客が入れるのは「ヨルダン川西岸地区」となります。
やはり、イスラエルにある「エルサレム」が交通の拠点となるでしょう。ちなみに、エルサレムの北側の地域に「ラマッラー」と「ジェリコ」があって、南側に「ベツレヘム」と「ヘブロン」があります。エルサレムの「ダマスカス門」のところから、パレスチナに向かうバスが出ています。
イスラエルの首都「テルアビブ」とエルサレムの2都市間の移動は50分ほどで、バスが頻繁に出ています。
《続きを読む》入国審査などは特になく、パスポートにスタンプが押されることもありません。外国人観光客にとって、イスラエル〜パレスチナの移動は全く問題なし。治安に関しても、「ヨルダン川西岸地区」に関しては特に武力衝突などがあるわけではありません。交通インフラも整っており、事件・事故に巻き込まれる可能性は高くはないでしょう。
街並みは案外普通ですし、主要都市であればKFCなどの世界的チェーン店も存在しています。割と英語も通じるので、観光に不自由はありません。イメージとしては、インドやアフリカよりも旅がしやすく、東南アジア経験者であれば楽勝だと思います。
筆者の場合はイスタンブール (トルコ) で乗り継いでテルアビブ (イスラエル) に入りエルサレムまで行って陸路パレスチナに入国という形をとりました。ちなみに、イスラエルの入国審査はちょっとだけ厳しめだと心得ておきましょう (やましいことがなければ、審査官の質問に笑顔で答えていたら特に問題なし)。中には、意味不明な尋問のために長々と別室で再審査を受けるハメになる旅行者もいるようです。
《続きを読む》「ヨルダン川西岸地区」では特に紛争などは起こっていません。外務省の安全情報で、「ベツレヘム」「ラマッラー」「ジェリコ」の3都市は十分注意してください、といったいわゆる危険度1のレベルです。イスラエル人とパレスチナ人のいざこざがたまに起きる程度で、ほとんどは入植地 (イスラエル人がヨルダン川西岸地区に住宅を建設し入り込んできているエリア) の近くや分離壁の近くなので、ツアーで通る幹線道路や街中で大変な事件が起きることはないでしょう。
盗難トラブルなどに関しては、ヨーロッパの人気観光地よりも安心なくらいです。ある意味、おかしな犯罪が増えてきている今の日本よりもはるかに安全なのかもしれません。
《続きを読む》まずイスラエルに着いてびっくりしました!街並みは想像をはるかに超え、なかなかの先進国です。
というわけで、せっかくイスラエルに来たので「市場」「ビーチ」「旧市街」「エルサレムの嘆きの壁」くらいは観光してと…
いざパレスチナのガザ地区へ!…と考えたのですが、これには特別な許可証が必要なようで危険で伴います。現実的にはやはりヨルダン川西岸地区に行くべきでしょう。
《続きを読む》エルサレムの隣町「ベツレヘム」(Bethlehem:バスで50分) には活気溢れるスーク (市場) があって、教会の鐘がいい感じで鳴り響いています。観光客が多いため安宿は充実。お土産屋さんなどで働く人はアラブ系で、宗教&文化が入り混じった独特な雰囲気が漂っています。パレスチナで最も栄えている街の一つでもあります。
ここにはイエス・キリストが生まれたとされる「降誕教会」 (世界遺産:入場無料) があります。彼が生まれた洞窟の上に建てられた教会で、世界中から多くの (巡礼目的の) 観光客が押し寄せています。2011年にユネスコへの加盟が承認されたパレスチナが世界遺産に申請したところ、イスラエルが反対動議を提出。しかしそれが却下されたのでアメリカが調査不十分という理由でさらに反対し、ユネスコへの分担金拠出を停止するほど揉めました。
結局、翌年にパレスチナ初の世界遺産に登録されましたがパレスチナとイスラエルの抗争などによって教会の維持や補修が進まない状況から、世界遺産登録と同時に危機遺産リストにも記載されています。教会の入り口はとても小さく『謙虚のドア』と呼ばれています。この洞窟に入りたいのであれば、時間に余裕を持ってお越しください。クリスマスシーズンにはクリスマスツリーが飾られ、さらに素敵な雰囲気となります。イスラエルとパレスチナを隔てる壁にはバンクシーの壁画があって、ここも完全に観光地化されています。
また、ベツレヘムの北西およそ7kmにある「バティール村」には古代ローマ時代 (約2,000年前) に作られたといわれる段々畑や伝統的な灌漑システムが残っていて、パレスチナの原風景を楽しめるスポットとなっています。この村は2014年にパレスチナで2番目に世界遺産に登録されましたが、同時に紛争や災害などの影響で保護が必要な危機にさらされている遺産リストにも登録されています。
さらに、ベツレヘムの東15kmのところにはキドロン渓谷をのぞむ荒涼とした岩山にあるマルサバ修道院があります。カッパドキア出身の修道士、聖サバスが5世紀後半に建てた世界で最も古い居住型の修道院の一つで、今なお多くの修道士が住みついています。渓谷の洞窟の中で禁欲的な生活を送るのが目的であったため、現在も女人禁制となっています。
《続きを読む》ある意味、ここからが本当のパレスチナとも言えるでしょう。だって、ベツレヘムから公共の交通機関が出ていないほどの場所にあるのですから。ヘブロン (Hebron) へは、タクシーか途上国によくある乗合いタクシーで行くことになります (ベツレヘムから約1時間)。
ヘブロンの街を歩いていると、女性はほぼ100%ヒジャブで頭を覆っておりムスリムだということがわかります。そして、街のそこら中には紛争の痕跡が残っています。外国人の旅人が集まるような宿はない印象で、多くの人はベツレヘムから日帰りで訪問しているのかもしれません。
ここでのおすすめは、迷路のような旧市街を時間を気にせず探索すること。道には所々、日本のJICAが作成した案内板が出ています。子供たちはみんな寄ってきて、大人たちも笑顔で挨拶してくれます。現地の人と仲良くなって街をゆっくり回ってみると、なおさら紛争の爪痕に心痛みます。
ちなみにヘブロンには「マクペラの洞穴」という宗教史跡があります。旧約聖書に登場し、「民族の父母」と呼ばれるアブラハム、サラ…など6名が埋葬されているようで、ユダヤ教とイスラム教の聖地となっています。
《続きを読む》パレスチナの事実上の首都だけあって、最も賑わっていると言っても過言ではありません。パレスチナ人だけでなく観光客も多く、一見するとヨルダンの首都アンマンのような感じもします。近代的な建物や飲食店もあり、イスラエルより物価が安いので長いできるのもGood!エルサレムからバスで50分なので日帰りも可能ですが、ここにはいくつかバックパッカー向けの安宿もあります。
🔵 ヤーセル・アラファト廊
パレスチナ解放運動の中心人物であるアラファト氏が眠っています。彼の執務室の再現があったりと博物館も兼ねています。
🔵 マフムード・ダルウィーシュ博物館
独立宣言の根本を作った「マフムード・ダルウィーシュ」の博物館です。庭園があって景色が良いので是非。
🔵 ラマッラー博物館
展示品目はあまり多くありませんが、パレスチナの先史時代からのことが学べる博物館となっています。
《続きを読む》パレスチナで最もおすすめの街の一つでもあるジェリコ (エリコ) は、「月の都」「ヤシの木の都」「1万年前にできた街」などと言われています。世界で最も低地に位置する (海抜マイナス260m) 人が住む都市としても有名です。聖書にも出てくる古い街で、遺跡が豊富なパレスチナを代表する観光地でもあります。
パレスチナの中で一番お土産屋さんが充実しているのはジェリコかもしれません。教会のあるモノレール乗り場の近くには、洞窟の中にお土産屋さんがあります。
🔵 ヒシャム宮殿
パレスチナ屈指の考古学遺跡 (8世紀) で、中東最大のモザイクの床が有名な宮殿です。宮殿跡からは、イスラム教が入りたての頃の建築様式やサウナ風呂の構造がわかるようになっており、とても重要な遺跡の一つです。いつの日か世界遺産に登録されることでしょう。
🔵 テル・アッスルターン遺跡
パレスチナ自治区にある世界最古の都市「ジェリコ」の遺構が見られる遺跡です。 ヘブライの民が最初に植民した都市と言われ、1万2千年前には城壁が街を取り囲み、 その中で人々が暮らしていました。
《続きを読む》分離壁の絵は一か所でなく各地に分散しているのですべてを見ることはできませんが、せっかくなのでどこか一つくらいは見ておきましょう。パレスチナ人の苦しみを表現した絵がいくつもあります。
パレスチナでは是非、新鮮な果物と野菜が美味しい市場に足を運んだり、理髪店巡りなどの街歩きを大いに楽しんでみてください。そこにこそ、人々の本当の暮らしがあるのですから。できれば、宿はホテルよりもホームステイ形式の方がいいかもしれませんよ。
個人的には、パレスチナで出会った人々は皆明るくて愛想が良かった印象があります。すれ違う人たちはいつも笑顔で挨拶を返してくれる、そんな温かみのあるパレスチナ。様々な歴史や問題を抱えてはいますが、学びや発見を求めている方の観光旅行にはおすすめです。